「平組流」拡大を目指し、株式上場の動きを加速へ
更新日:2025/8/6
「この人に廃業を伝えるくらいなら死んだ方がマシだ」。

平組(鹿児島市)の平峰恒成社長が限界を悟り、専務の宮良俊彦氏に倒産の意志を伝えようとした際、唐突に芽生えた偽りなき感情である。地域にあるソフトボールチームの監督が親方だった縁で、入職を決めた建設業。業界に慣習として残る「理不尽・非合理・非効率」に疑問を抱き、独立した当初は順調に業績を伸ばせていた。「自分は特別」と副業に手を出した頃から努力を怠り始め、社内外の異変に気付いた頃には「壊滅的な状態に陥っていた」と当時を振り返る。即座に会社解散の意向を示したい。だが、本人を前にするとどうしても言い出せない自分が現れる。モヤモヤした状況が続く中、「それならば『自分は1度死んだもの』と覚悟を決め、最後に死力を尽くす」と奮闘する日々を決意した。

真っ先に始めたのは、すぐに売り上げアップを目指すのではなく、全社員で過去の日報を分析し、成功・失敗の要因を突き詰めること。冷静に見極めると事業展開において、外的要因を全く考慮せず、好調な時はノリと勢いのみで物事を進めていたこと。また、マイナスの兆候が表れても「たぶん、すぐにプラス転じるはず」と見ないフリをする癖があったことなど、目を覆いたくなる局面が随所に散見した。現実と向き合うことは苦行の連続だったが、「原因が発覚した後は、倍以上のエネルギーを費やして改善するだけだった」と語る通り、業績は半年ほどで好転。1度良い循環を生み出せたら「同じことを繰り返すだけ」と、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回す重要性を再認識できたことで、「第2創業期」を迎えられた。現在の売り上げは5億円に到達しており、今なお文字通り「死ぬ気」で邁進する組織体制を維持できているという。


現段階では鹿児島県内のみで活動するが、平峰社長は「5年後を目処にエリアを九州全域に拡大し、早期化を図るためM&Aを実施したい」と意欲を見せる。会社の主軸は足場・土工などの専門工事。従来あった施工の概念を再構築し、自社独自の基準・考え方を「平組流」と銘打った上で、社内業務を統合的に評価する仕組みも作り上げた。「価格競争に巻き込まれない」「社員の待遇を良くする」「1流の企業になる」などを自身の中で追求すると、自然と「会社の株式上場が必須」という答えに辿り着いた。当面の目標は「売り上げ規模を30億円にすること」。建設業は「何者でもない私をここまで引き上げてくれた。平組流の奥深さ・汎用性の高さを業界内で証明するため、あらゆる挑戦に取り組んでいく」と語る眼差しには一点の曇りもない。


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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。