「地域創生企業」としての更なる定着を目指す ミタニ建設工業
更新日:2025/8/22
ミタニ建設工業(高知市)が、今年9月に創立55周年の節目を迎える。これまでに総合建設企業として地域のインフラを支えながら、高知県内では先駆けとなる太陽光発電などを手掛けてきた。近年では、高知県の一大プロジェクトである五台山展望施設の再整備を実施するなど、建設業の枠組みを超えた事業展開を志している。


三谷剛平社長は、スーパーゼネコン・大林組に勤務後、家業である同社に参画した。学生時代から社長業に関心があり、「いずれは経営に携わりたい」と心に決めていた通り、29歳で社長に就任。しかし、その3年後に社長に就く前の官製談合を告発されたことで、創業以来の危機に陥った経験を持つ。主要事業である公共事業案件が指名停止となった期間は1年7ヶ月。「起きた現実の全てを受け入れ、代表者として真摯に対応するだけ」と謝罪と説明を尽くす中、「新たな事業に挑戦する契機にするべき」と前向きに捉え準備することに努めた。

この間、三谷社長が着目したのは太陽光発電事業。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を活用し、会社が保有する土地に発電所を施工。宮地電機(高知)との協業により営業体制を強化できた効果もあり、公共案件のマイナスを補う業績回復に成功した。その後も三菱商事パワーらと共同で高知ソーラー合同会社(高知県香美市)を立ち上げ、四国最大のメガソーラー「高知ソーラー発電所」を運営するなど、太陽光発電事業は主要事業の1つとして確立したという。

ミタニ建設工業では現在、新卒採用において「この会社で働きたい」という強い想いを大切にする選考方法を取り入れている。その象徴的なプロセスが、最終面接の前に設けられたユニークなステップだ。選考通過者には、なぜ同社で働きたいのか、何を実現したいのかを、家族や学校の先生などに伝えたうえで7名以上の推薦状を集めるという内容である。提出された推薦状をもとに、自身が最後にプレゼンテーションを行う。このプロセスを導入して以来、入社後のミスマッチが大幅に減少したそうだ。 「学生の『今』の動機に耳を傾けるだけでなく、人生設計まで含めて学生と向き合い、徹底的に対話することを大切にしている」と三谷社長は語る。この対話の過程で、時には学生自身が「本当にやりたいことは建設業界ではなかった」と気づき、辞退するケースもあると。しかし、ミタニ建設工業では、「それが本人にとってプラスになるのであれば、全く問題ない」と捉えており、学生一人ひとりの未来を真剣に考えている姿勢が見て取れる。近年では、社内にコーチングチームを設置するなど、社員の育成・強化にも注力。「自律型・社員主導型」の組織を目指し、社員全員が主体的に考え、実績を積み上げられる文化の醸成を目指している。

「建設業を進化させ、日本を変えていく」と三谷社長が発するメッセージは力強い。目指す企業像は「『地域創生企業』として、地場に更なる定着した組織になること」。この具現化を見据え、奈半利町と地域活性化に関する包括連携を締結した。今後は廃校となった校舎をリニューアルし、子供たちのための体験型学習施設の整備なども構想している。創業時から現在に至るまで「地域貢献」を重視し、社内の盤石化も実現しつつあるミタニ建設工業。高知県から未来に向けた建設業界の在り方は、徐々にだが変わり始めている。

ミタニ建設工業のInstagram: https://www.instagram.com/mitani32/
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。