企業永続を見据えた組織化に本腰 姶良電設
更新日:2025/9/1
入社間もない頃、現場作業に従事している時は、順調に業績が伸びていると思い込んでいた。しかし、姶良電設(鹿児島県姶良市)の東鶴真児社長は「いざ決算書を見ると、初めて債務超過に陥っている現実を知った」と当時を振り返る。経営面は全て創業者かつ社長である父親が担っていたが、「このまま放置すれば会社を畳まざるを得なくなる」と、それまでの根拠なき楽観的な姿勢を猛省し、早期の立て直しを誓った。

再建のきっかけとなったのは、青年会議所(JC)に入会したこと。「多くの経営者に出会い、活動する中で意識に大きな変化が表れた」と率直に話す。当初は、イメージが先行して「お付き合いの要素が強い団体なのでは?」との偏見も抱き入会は保留していた。しかし、2年ほど自身の考えのみで仕事に取り組んではみたが、今の自分の力には限界があると悟ったこと。また、JCには後継ぎとして同じ立場・境遇から克服した経験者が多いと聞き、藁にもすがる思いで加盟を決意。入会後、組織化の重要性などを理解・遂行し、3年後には「無事に黒字化を果たすことができた」と安堵の表情を浮かべる。ある程度の流れを形成できた時期に、父からの薦めもあり社長に就任。現時点に至るまで、堅実な実績を残している。

現在、東鶴社長は「会社としての2番手・3番手を育て上げることが重要」と捉えている。入社した社員は順調に定着しており、社内の雰囲気も良い。しかし、「仮に今すぐ自分が居なくなったら、会社は問題なく回るのか?」と自問すると、答えは「極めて難しい」と判断。姶良電設を組織化することは急務と捉えている。建設業は後世にも成果物が残り、人々に実績を示せる誇り高き仕事。現場で業種ごとにスムーズな連携を果たすには、全員の細かな配慮と意思統一を要するが、東鶴社長は「この全てが合致し結果を生み出せた感動は何物にも代えられない」と醍醐味を語る。社員が同じ体験を継続的にできるよう、技術的な発展も遂げられる職場環境の整備にも注力している。

東鶴社長は「大きな目標を立てるのでなく、『昨日より今日、今日より明日』と小さな成長を積み上げることで、いずれ高みに辿り着くと考える」と堅実なスタンスを述べる。「建設業をより良い業界に改善していきたい」との思いは強く、鹿児島県内で専門工事に特化した企業が集結する「鹿児島専門工事企業会(KSCB)」にも加盟し、積極的な啓蒙活動を実施する。会社は今年4月に創業40周年を迎え、蓄積した知見と新たなアイデアを融合する準備も整った。「建設業界および姶良電設が永続するために、今やるべき最善策は何なのか?」。この原動力を基軸に、姶良電設は今日も意欲的な事業展開に励んでいる。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。