DX加速化で最前線での邁進を継続へ 金杉建設
更新日:2025/9/10
金杉建設(埼玉県春日部市)には、ICT施工の内製化をいち早く実施し、最先端のデジタル建設技術の導入に取り組み続けた実績がある。きっかけとなったのは、2016年4月に国土交通省が推進を始めたi-Construction。テクノロジーを通じて、業務の生産性を飛躍的に向上させた業績が評価され、2017年度には「i-Construction大賞」優秀賞、2023年には「インフラDX大賞」の工事・業務部門で国土交通大臣賞を受賞した。建設業界のトップランナーとして、様々なDX建機などを取り入れており、現在に至るまで現場の業務効率化に向けたトライ&エラーを繰り返している。


i-Constructionの導入当初、金杉建設ではICTを取り入れた建設プロセスの大部分を専門業者に外注していた。発注者からは好評だったものの、担当者から「正直、何をやっているのか、よく理解できていない」という本音が上がったこと。また、「現状のままでは利益率が低く、自社に技術も蓄積できない」と早期に理解できたことを受け、吉川祐介社長は「ICTソフトや3D測量、ICT建機のメーカーとの綿密な協議を経て、『理論に基づいた建設現場の生産性向上』に取り掛かった」と当時を振り返る。自社で機械は持たずリース・レンタルを選んだ方が、効率的と謳われた時代。しかし、一度立ち止まり冷静に分析すると、繁忙期にはICT建機には標準仕様の5倍近い金額を支払うケースなども散見し、「毎回高い金額を支払うより自社で購入し保有した方が、トータルでのコストは削減できる」と確信し、現在に繋がるスタイルを構築したという。近年では、協力会社にマシンガイダンスを付けたバックホウの貸与や、協力会社が保有するバックホウに取り付けられる、後付けマシンガイダンスの貸与なども行う。一連の経験を通じて、「現場の負荷を軽減するには、可能な限り管理部門を強化する必要がある」との定石を見出し、今なお改善・改良を試みている。


常日頃から吉川社長は「人間はヒューマンエラーを起こすもの。その前提に立った上で、仕組みによって事故を最小限に防げる体制を目指している」と考えている。もちろん、時として根性論が必要になる時もある。しかし、頑張った人が得をするような人事・報償・研修制度などを確立することで、意欲に溢れる有望な社員が不当な扱いを受けないよう細心の注意を払う。吉川社長の信条は、「新しい技術を活用した資材・機械・工法を駆使することで、可能性の拡張を続けること」。人手不足が顕著の中、設計通りではなく、価格だけにこだわらない、より良いインフラを提供する気持ちは誰よりも強い。幸いにも社内には、「失敗を恐れず、果敢に挑戦を続けよう」という雰囲気が漲っている。建設業界全体にDX加速化の波が押し寄せる中、他企業より一歩先を進む金杉建設。今後も常に最前線での邁進を前提とした組織運営により、同社特有の開拓を続けていく方針である。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。