井出組が新たな挑戦に向け全力を尽くす
更新日:2025/9/11
今年5月に井出組(静岡県富士市)が創業145周年を迎えた。長年に渡り静岡県のまちづくりを支え、「じつは!井出組」のキャッチフレーズが、地元に浸透する総合建設企業である。昨年、策定した5ヶ年の中期経営方針では、「サステナブルで、未来ある企業」をテーマに掲げており、DXによる業務効率化の推進や、次の世代を担う人材の採用・育成の強化などを進めている。伝統を継承しながら、常に先を見据えた柔軟な経営を目指している点が特徴である。


臼井光之社長は、新卒で千葉県のゼネコンにて4年間務めた後、縁あって富士宮に移住し、井出組に参画した経緯を持つ。入社以降、日本道路公団(現・NEXCO)が発注する東名高速道路の橋梁耐震工事や、東日本大震災で被災した火力発電所の復旧工事など、数々の大規模プロジェクトの現場を歴任。「特に震災復旧は、夏場の電力を確保するための工事で、これまでにないプレッシャーを感じたが、四苦八苦の末に克服したことで成長に繋げられた」と常に前向きなスタンスを堅持する。


長年、現場での経験を積んできた白井社長にとって、ICTを始めとするテクノロジーの進化や働き方改革への対応は、「必須事項であり最優先に取り組むべき課題」と強調する。「現在、建設業界は大きな変革期。この変化に応対できるか否かが企業の成長を決定付ける」と断言するように、3年前には自身が旗振り役となり、各部署から社員を抜擢し、IT・DXタスクチームの編成を実施。書類の電子化や情報共有ツールの導入など、生産性向上に向けた施策を取り入れられたという。中期経営方針では、社員育成に全力を尽くす計画も挙げており、地元の工業高校からの採用が激化する中、文系の学生に対しての門戸を開放。「技術面は入社以降でも身に付く。当社が重視するのは、『誠実さとやる気』。多様な人材を受け入れることで、誰もが成長できる職場環境の整備も進めたい」と意欲ある若手を積極的に迎え入れる姿勢を示している。


社長に就任して間もなく1年が経過する。臼井社長は、「私は、先行きが不透明な時代に突入した中、事業改革が必要なタイミングで経営者に選ばれただけ。組織の活性化が実現すれば、誰が代表に就いても問題ないと考えている」と冷静な一面も見せる。その一方で、当面の目標は「経営基盤を固め、社員一人ひとりが、この会社で働くことに誇り・安心感を持てるような会社を目指す」と確固たる経営理念も語る。激動の時代を乗り越えてきた百戦錬磨の現場監督は今、経営者として新たな挑戦の真っ只中に居る。近年、有能な新卒の採用にも成功し始めている。この良き流れを追い風に、「建設業の醍醐味である『完成時の達成感』を全社員に伝えていくことで、建設業界に貢献していきたい」と思いを話す眼差しは、真剣そのものである。

Instagram:https://www.instagram.com/idegumi/
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。