「社員の幸せ」を最優先に、マモルが独自の飛躍に挑む
更新日:2025/9/17
マモル(東京都世田谷区)の新舘豊晃氏には、社長就任1年目に約4000万円の赤字を計上した過去がある。叔父が突如退任したことで就く形になった代表取締役。何をどのように進めるべきなのか。頭を抱え始めた矢先、主力メンバーが次々と退職する事態に陥り、社員同士の意思疎通もスムーズにできず、「眠れぬ恐怖の日々を過ごしていた」と当時を振り返る。手探りの状況下で始めた取り組みが、「アルコールブレスト会議」。社員全員がお酒・食事を交えながら定期的に接する機会を設けると、今まで聞けなかった数々の本音を共有し合えるよう変化し、社内の雰囲気を大きく改善できた。翌年には黒字化を達成し、現在は過去最高益を2期連続で更新している。


短期間での業績回復を実現した要因を、新舘社長は「『社員の幸せ』を最優先に置いた経営に振り切れたこと」と即答する。客観的に社員が真に喜ぶことは何かを追求すると、「公平な評価体制を基に、利益を適正に分配すること」と判断。これらを叶えるには、「技術力・社会貢献も評価対象になる公共工事に絞り、地域での信頼・実績を確立することで、利益率の高い案件に集中する必要があると感じた」と基本スタンスを述べる。初年度から確保した利益を適切に還元できたことで、社員のモチベーションは飛躍的に向上し、現在では社員の平均年収を820万円まで押し上られたという。


新舘社長は、自身が重視する方針を「社員第一の経営」と打ち明ける。会社では、社員旅行や事業共有会など、社内イベントを開催することで親睦を深めるケースが多く、「組織としての動きを理解し、周囲との協調・調和を抵抗なくできる社員が、定着・活躍する傾向が強いと分かってきた」と見立てを話す。多くの社員も参加する採用面接で注視するポイントは「チームワークを前提に行動できる人間か否か」。何となくだが、この特徴を意識し始めてからは、入社から間もない社員が周囲の協力を得て、難関な試験を突破するなど、社内には今までにない勢いが生まれているようだ。


直近の目標を新舘社長は「社員の平均年収を1000万円にすること」に設定した。「私たちの主要業務は、地域のインフラを守ること。プロフェッショナル集団として、施工不良のない街づくりを持続できれば、決して不可能な課題ではないと信じている」と目を輝かせる。近年では、障害者雇用にも積極的に取り組み、視覚障害者による歩道の点字ブロック点検により設置場所を提案・修正するなど、世田谷区に対して積極的に改善を促し評価され強みもある。マモルは、2024年度・世田谷区発注工事の中で5本の優良工事を受賞したことで、確固たる地位を築き始めている。会社として掲げるテーマは「One for all, All for one 一人はみんなのために、みんなは勝利のために」。今後も一人ひとりの社員が自立・共生を重んじ、地元の安全・未来を支えるスタイルで、同社は特有の飛躍を続けていくはずだ。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。