道路標識・標示業の存在意義を向上へ メタルテクノ神戸
更新日:2025/10/14
メタルテクノ神戸(愛知県豊橋市)の増子理恵子社長には、テレビ局に勤務していた過去があり、当初は家業を継ぐ気持ちは皆無だったという。しかし、社長である父親が還暦を迎えるに当たり、「誰が継ぐのか?」を突き詰める環境に置かれたことで、「白羽の矢が立ち、一念発起した」と入社までの経緯を語る。創業が1688年と歴史・伝統ある企業に入るに当たり、戸惑いも大きかったが、「道路標識・標示業発展のため最善を尽くす」と今なお確固たる覚悟を持ち続けている。吉田藩の御用鍛冶として始まった会社は、現在では交通安全には欠かすことの出来ない防護柵などの施工監理を担うなど、幅広い業務を手掛けるようになった。


社長に就任した2019年以降、2児を育てる母親として多忙を極める日々に、「従業員が心地よく仕事に打ち込める環境の整備が不可欠」と痛感し、産休・育休の拡充や新評価制度を新設。自身も率先して制度の活用を試みるなど、社員の定着率アップに努めている。コロナ禍では、不確実性が増す状況に差し掛かっても「今しかできない物事に集中すべき」と判断。倉庫屋根の葺き替えや、事務所の机周りの総入れ替えを実施するなど、新たな取り組みを始めたことで、社内にポジティブな流れを生み出すことができた。現在も「部署ごとで見ると享受できるメリットに差異もある」と状況を冷静に分析し、常にアップデートを心掛けるスタンスも印象的だ。


社外の活動では、愛知県道路標識・標示業協会の防護柵・遮音壁部会長を務め、「痛ましい交通事故が起こる度に、自身の役割を考えさせられる」と真剣な眼差しで語る。部会では、県内に延びる主要地方道・県道などの防護柵の危険箇所を調査・報告し、「交通事故を減らすには、プロの目による調査と提案が必須。関連業務に携わる経営者として、この部分は疎かにせず続けていく」と明確な意志を示す。協会関係者らと技術研修会を開くことで、技術の研鑽も欠かさず行っており、「人材や資材など制約があるが、粛々と業務を遂行することで、事故の最小限化に貢献したい」と長期的な視点と対応に注力する姿も特徴である。


増子社長は、「道路標識・標示業は、専門工事業者にしか出来ないことが多く、道路の安全と安心を守る当社の存在意義は、今後ますます高まっていくはずだ」と見立てを語る。業界のイメージを良き方に変えることは容易ではないが、「地道な活動を続けることが肝要。建設業界内での当社の認知度を高めると同時に、女性が活躍できるという現実も広く周知したい」と率直に語る目には熱いものが帯びている。創業以来の理念は、「顧客に信頼され、地域に愛される会社」。メタルテクノ神戸が歩み続ける道のりは、今後も特有の輝きを伴い、堅実な指針を業界内に差し示していくはずである。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。