「人」と「仕組み」の追求で、マツオカ建機が新たなステージに挑む
更新日:2025/10/21
9月16日にマツオカ建機(三重県四日市市)が本社を移転した。松岡賢社長は「M&Aによりグループ企業は11社に増えた。全体での従業員数は1000人を超える勢いで増員を続けており、本社機能を整えるタイミングに差し掛かっていた」と経緯を話す。新築したオフィスは、「その時の都合に合わせて仕事をする場所を選べる=Activity Based Working」の考えで設計され、柔軟性の高い働き方を実現。広大な敷地には、新しく医療機関と薬局を誘致し、誰もが利用できるスペース「ミライリスパーク」を整備した。「子育て世代が多く、穏やかな時間が流れるこの地域に馴染む施設にすることを最も重視した」と地域への思い入れも明らかにした。


マツオカ建機は、松岡社長の祖父が1938年に創業した。三重県ではいち早く建設機械のレンタル業に参入し、高度経済成長期のコンビナート建設ラッシュを背景に事業を拡大した。その後も、業界のニーズに応じてレンタル品を充実させた他、足場工事と運搬事業にも参入し、顧客の要望に柔軟に対応できる体制を整えたことで販路の開拓に成功。順調に業績を伸ばす一方で、「減点主義」の組織文化に陥っていた当時の風土を憂慮し、「このままではイノベーションが起きず、時代に取り残される。利益第一ではなく、社員と顧客の幸せを追求する経営へ転換すべき」と方針転換を決意した。旧来の価値観に固執する役員が退職するなど改革には痛みも伴った。しかし、「彼が辞めたことで、振り切った施策を打てた面もあった」と当時の苦境をポジティブに捉える姿も印象的である。


松岡社長が真っ先に着手したのは「バリューチェーンの強化」。「お客さまを大事にする姿勢は社員だからこそ浸透する」と確信し、建設機械・資機材のレンタルや足場の設計・施工、物流などのサービスを、一貫して自社提供することにこだわりを見せる。また、リソースを増やすためM&Aを実施し、思想を共鳴できるパートナーとの提携に成功。子会社は年々増え、顧客への提供価値の最大化につながっている。松岡社長は「22年のホールディングス体制への移行も、この戦略を加速させるために必要な選択だった。グループ各社の経営をバックアップし、システムの統一や採用などの取り組みなどを一括支援することで、一社も取り残さない組織を構築していく」と並々ならぬ覚悟を示している。


社内では「属人化からの脱却」をテーマに、DXの加速化を実施。製品カタログから取扱説明書まで、あらゆるデータをAIに学習させ、顧客からの問い合わせに迅速かつ正確に対応できる仕組みを模索する。「若手からベテランまで、社員全員が同じレベルで対応可能な組織を作りたい。誰もが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えることが、お客さまへの提供価値の向上に直結する」と力強く語る。


松岡社長は「社員の成長と幸せ、顧客貢献を追求し、その源泉である『人』と『仕組み』に徹底的に投資する」と直近のスタンスを語る。現在の取り組みの延長線上にこそ「企業の持続的な成長がある」という確固たる信念は揺るがない。「いつ、どのような状況下でもレンタルできる環境を形成する」。マツオカ建機が掲げる目標は普遍的で、今後も「社会に必要不可欠な企業」になるべく、会社一体となった全力での挑戦は続いていくはずだ。
ミライリスホールディングス株式会社:https://mirairis-hd.co.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/mirairis_holdings/
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。