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建設の総合プロデュースで”人にやさしい建物づくり”~株式会社鈴木工務店

更新日:2026/1/14

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2025年11月9日(日)15:00~15:55
株式会社鈴木工務店 建築研究所 代表取締役CEO 鈴木 章平さん

大正9年に広島県内2番目の建築設計事務所として創業した、建築設計事務所・施工管理業の株式会社鈴木工務店。医療福祉関係や食品工場の設計施工を得意分野とし、完成後の長期にわたるアフターメンテナンスまで対応しています。代表就任と共にDX化を積極的に取り込んできたという鈴木社長。現在の課題と、今後の展望についてたっぷりと語っていただきました。

創業80年を超える設計・施工一貫の歴史

クラフトバンク金村(以下、金村):株式会社鈴木工務店 建築研究所がどのようなお仕事をされている会社か、まずはご紹介いただけますか。

鈴木章平さん(以下、鈴木):もともとは建築設計の仕事から始まりまして、80年以上前から建築の請負、施工管理業務を開始し、今に至ります。

金村:スタートは建築の設計事務所で、現在は自社で「作る」という施工まで一貫して請け負われているのですね。ホームページを拝見すると住宅はもちろんですが、非住宅の物件も非常に幅広く手掛けられています。

鈴木:そうですね。住宅以外にも多くの実績があります。

難易度の高い建築に特化した強み

金村:特にクリニックや医療関係の実績が豊富で、非常に意匠性の高そうな物件が目立ちます。鈴木工務店の中で得意とされているジャンルなどはあるのでしょうか。

鈴木:時代によってニーズは変わりますが、弊社は地元密着の中規模建築、だいたい請負金額で30億円くらいまでの規模に対応しています。建物にも色々とあり、倉庫のように上屋を建てて終わりというものもあれば、設備配管が複雑だったり気密性を重視したりするものもあります。

金村:単に建てるだけでなく、中身の複雑な建物にも対応できるということですね。

鈴木:はい。基礎の堅牢さなどが要求されるような、難易度の高い建築に特化した会社だと思っています。

クリニック・医療施設における「動線」のこだわり

金村:医療系の施設ですと気密性もキーワードになると思いますが、お客様からはどのようなリクエストが多いのでしょうか。

鈴木:やはり一番重視されるのは「動線」ですね。日常的にそこで働かれる先生や看護師の皆さんが、頻繁に他の部屋へ行き来するわけですから。

金村:働く方々の効率が非常に重要になってくるわけですね。

鈴木:それだけでなく、患者さんの動線も考えます。待ち時間に退屈されないような工夫なども含めて、他の店舗とは少し違う配慮が求められるのが医療施設の特徴です。

患者と医療スタッフ双方の居心地を追求する

金村:そこにいる皆さんが、居心地良く、働きやすい環境を作ることが求められているのですね。

鈴木:その通りです。ドクターやナース、その他のスタッフの皆さんがいかにスムーズに動けるか。そのオーダーにしっかりと応えることが私たちの仕事です。

金村:機能性と快適性の両立が、医療建築の肝と言えそうです。

鈴木:はい。設計の段階からしっかりと話し合い、最適な配置を提案するようにしています。

広島から山形・青森まで広がる食品工場の実績

金村:広島の福山周辺は製造業も多いと思いますが、食品工場の実績もかなり大きな規模のものを拝見しました。

鈴木:広島県竹原市に本社がある、ジャムなどで有名なアヲハタさんの工場を50年以上前から弊社だけで担当させていただいています。キユーピーさんにOEMで出されている商品も作られている非常に大きな工場です。

金村:50年以上のお付き合いとは驚きです。地元だけでなく遠方の工場も手掛けられているのですか。

鈴木:山形県にある東北工場にも伺って施工をしましたし、今でもお付き合いがあります。青森県の工場へも行ったことがありますね。

東北で学んだ耐雪建築のノウハウを地元へ

金村:広島から山形や青森となると、かなりの距離ですね。雪の多い地域での施工は大変だったのではないですか。

鈴木:山形の尾花沢というところは、雪が3メートルも4メートルも積もる場所なんです。そこで「耐雪建築」のノウハウを習得しました。

金村:そのノウハウが、地元の施工にも活かされているのでしょうか。

鈴木:福山市の北にある神石高原町という標高600メートルくらいの場所にも、デニムのカイハラさんの工場があるのですが、そこもかなり雪が降ります。東北で学んだ設計を活かして施工させていただきました。どこで仕事をしても、そこで得た経験は別の現場で必ず活きると感じています。

食品工場における異物混入対策とセキュリティ

金村:食品工場を建てる際、衛生面などで特に気を使われるポイントはどこでしょうか。

鈴木:やはり一番は「異物混入」ですね。部外者が入ってこられないような動線の確保やセキュリティには非常に気を使います。

金村:作る過程で何かが入ってしまうことを防ぐだけでなく、外部からの侵入も防ぐ設計が必要なのですね。

鈴木:もし異物混入が起きれば、企業にとっては甚大なダメージになりますから。アヲハタさんのような会社は、かなり早い時期からそうしたセキュリティ意識を高く持たれていました。

手術室並みの気密性を求めるクリーンルーム技術

鈴木:異物混入対策としては、空調管理も重要です。ビン詰めやパウチ詰めをする工程は、まさに手術室のような環境で行われています。

金村:それほどまでに高いレベルの気密性が求められるのですね。建築技術としてもかなり高度なものが要求されそうです。

鈴木:そうですね。そのような高度な建築技術については、長年のお付き合いの中で育てていただいたと感じています。

金村:お客様と共に技術を高めてこられた歴史があるのですね。

時代の基準「HACCP」への迅速な対応

鈴木:最近は「HACCP(ハサップ)」という品質基準に準拠することが求められます。昔はそこまで厳しくなかった会社も、大手企業と取引をするために基準を満たす必要が出てきています。

金村:時代の変化に合わせて、工場の建て替えや改修のニーズも増えているのでしょうか。

鈴木:はい。小規模な工場でも基準への対応が必要になっており、そうした改修工事もよく承っています。

金村:常に最新の基準や技術にアップデートし続けていくことが、信頼に繋がっているのですね。

東京から広島へ、家業へ入った意外なきっかけ

金村:鈴木さんご自身が、鈴木工務店に入社されたきっかけについても伺いたいのですが。

鈴木:正直に言うと、いわゆる「接収」ですね。大学時代は東京にいたのですが、当時はバブルが弾けた直後くらいで、まだ就職先はありました。でも、私は車が大好きだったんです。

金村:車が大好きで東京にいた、そこからなぜ広島に戻られたのですか。

鈴木:東京で車を持とうとしたら、駐車場代が高すぎて払えなかったんです。「これは無理だ、帰ろう」と思ったのが、実は大きな理由の一つでした。

10年間の営業時代と「平成の大合併」

金村:家業を継ぐという意識は、学生時代からお持ちだったのでしょうか。

鈴木:父が私より42歳も上だったので、後継ぎとしての期待は感じていました。入社してからは、まずは営業から始めました。私は商学部出身なので、最初の10年は営業一筋でしたね。

金村:営業時代に、特に印象に残っている仕事はありますか。

鈴木:ちょうど「平成の大合併」があった時期のことです。広島県内の市町村が今の3分の1くらいに減っていく中で、役所に名刺を置きに行く仕事が山ほどありました。

広島県北の役場を巡る過酷な営業活動

鈴木:当時はまだ高速道路も整備されていなくて、福山から県北の三次や庄原といった地域まで、山を越え谷を越え車を走らせていました。

金村:今の時代のようにスムーズには移動できなかったのですね。

鈴木:「まだ着かないのか」と思いながら、1日に何箇所も役場を回るんです。道もあまり良くなかったですし、あの頃の移動は本当に辛かったですね。

金村:そうした地道な営業活動が、今の会社の基盤を作っているのですね。

33歳での社長就任と「老害」との決別

金村:社長に就任されたのは、おいくつの時だったのですか。

鈴木:33歳の時です。今から20年前ですね。自分から父に「社長にさせてくれ」と直談判しました。

金村:ご自身から志願されたのですね。何か強い動機があったのでしょうか。

鈴木:当時の父は75歳でしたが、いわゆる「老害」と言える状態になっていました。全社員を集めて自分の好きな話を2時間も続けたり、それが定時後に始まったり。若手社員や他の役員からも「早く代わってほしい」と期待されていたんです。

ITの夜明けと建設業における活用の確信

鈴木:父に代わってほしいと言われた時期、ちょうどWindows 95が普及し始めていました。インターネットが使えるようになり、これは建設業でも絶対に使えるぞという確信がありました。

金村:新しい時代の技術を、いちはやく取り入れたいという思いがあったのですね。

鈴木:はい。でも父は新しいものには否定的で、何でも理由をつけて拒否していました。時代に合わないやり方が続くことに危機感を感じていたんです。

金村:社長交代は、会社をアップデートするために不可欠なステップだったのですね。

社内コミュニケーションツールとしてのMixi・Facebook活用

金村:ITの導入にも積極的に取り組まれてきたとのことですが、具体的にはどのようなことから始められたのですか。

鈴木:最初は情報共有が大事だと思い、MixiなどのSNSを使って画像ファイルの共有などを試みました。ところが、当時はまだ匿名性が強かったこともあり、社員がアカウント登録を嫌がってしまって。

金村:プライベートのツールを仕事に使うことへの抵抗があったのですね。

鈴木:その後、Facebookなども試しましたが、なかなか時代とマッチしませんでした。iPhone 4の頃はまだアプリも少なくて、ブラウザもスマホ対応が進んでいませんでしたから。

情報共有の可視化を目指した自社アプリ開発

金村:紆余曲折を経て、現在はどのようなシステムを構築されているのでしょうか。

鈴木:今はKintoneをベースにして、外部パートナーと協力して自社アプリを作っています。現場の状況をリアルタイムで可視化することが目的です。

金村:建設現場は常に場所が変わりますから、リアルタイムな情報共有は大きな課題ですよね。

鈴木:ええ。現場監督が今どこの現場にいて、工程通りに進んでいるかをスマホでチェックできるようにしています。かつてのように会議で「どうなっているんだ」と聞かなくても、手元の端末で全て把握できる体制を目指しています。

バックオフィス改革とベテラン経理チームとの衝突

金村:デジタル化を進める中で、社内での反発などはなかったのでしょうか。

鈴木:2014年に父が亡くなってから、本格的なDXを開始しました。まずは経理業務のクラウド化に取り組んだのですが、ここで大きな衝突がありました。

金村:バックオフィスのベテランの方々と、意見が分かれたのですか。

鈴木:私が改革のために外部の税理士さんを呼んだら、当時の経理担当が「必要ないから帰れ」と追い返してしまったんです。私が呼んだ客に対してそんな態度を取るなんて、と怒り心頭でした。結局、その翌日に3人のベテラン経理担当には辞めてもらいました。

組織の再生と金融機関出身CFOの招聘

金村:私が生まれる前からいたようなお局様も含めて、3人も一度に辞められたとは。その後はどうされたのですか。

鈴木:しばらくの間は、どこに何の資料があるかも分からないという大変な状態でした。全てがその人たちの頭の中にしかなくて、パソコンの中にも入っていなかったんです。

金村:まさに情報の属人化ですね。そこからどうやって立て直したのでしょうか。

鈴木:運良く銀行出身の非常に優秀な人材と出会い、現在のCFOとして入ってもらいました。彼が全てをチェックし、リアルタイムで数字が出るように整えてくれました。内部の人材に恵まれたことが、改革の成功に繋がったと感じています。

建設業界の未来を阻む「一級建築士の高齢化」

金村:鈴木さんが今、業界全体の課題として感じていることは何でしょうか。

鈴木:とにかく人材不足ですね。あまり知られていないことですが、全国の一級建築士の7割以上が、今や60歳以上なんです。

金村:そんなに高齢化が進んでいるのですか。

鈴木:30代や40代は15パーセントから20パーセント程度、20代に至っては数パーセントしかいません。資格を取るのが非常に難しく、お金もかかることが若者の参入を阻んでいます。弊社でも資格取得の支援はしていますが、業界全体として非常に危機的な状況です。

若手建築士への資格取得支援と環境整備

金村:若手の方々に鈴木工務店を選んでもらうために、どのような工夫をされているのですか。

鈴木:地元福山の学校を出た子たちでも、やはり東京の大手ゼネコンへ流れてしまいます。そこで、まずは給与や待遇の面で、中小企業の中でもトップクラスを目指しています。

金村:待遇の改善だけでなく、環境面での取り組みはいかがですか。

鈴木:資格取得の手当を充実させるのはもちろん、週休二日制の導入や、オフィスのリニューアルにも力を入れています。やはり「かっこいい職場で働きたい」という思いは大切ですから。

福山にいながら東京を感じるオフィスリニューアル

金村:オフィスのリニューアルについても伺えますか。

鈴木:使っていなかったフロアを改装して、まるで東京のオフィスにいるような空間を作りました。洋書の建築誌や美術書を並べ、設計チームがそこからインスピレーションを得られるようにしています。

金村:感性を磨ける場所を社内に作られたのですね。

鈴木:はい。休憩スペースも兼ねた多目的空間なのですが、こうした環境を整えたことで、実際に辞めた社員が戻ってきてくれたという嬉しい出来事もありました。

「一度辞めた社員」が戻ってくる魅力的な職場づくり

金村:一度辞めた方が戻ってくるというのは、会社への信頼の証ですね。

鈴木:男性1名、女性1名の計2名が戻ってきてくれました。55歳くらいのベテランと、10年ほど勤めていた若手の女性です。「また鈴木工務店で働きたい」と思ってもらえるのは、本当に経営者冥利に尽きます。

金村:一度外を見た上で、自社を選び直してくれたわけですね。

鈴木:他社で得た経験をまた弊社で披露してくれるのは、会社にとっても大きなメリットです。以前のような「一度辞めたら二度と敷居を跨ぐな」という雰囲気は、もうありません。

女性が活躍し、働き続けられる福利厚生の充実

金村:女性の割合もかなり高いとお聞きしました。

鈴木:全社員50数名のうち、15名ほどが女性です。設計士として活躍している女性もいますし、育休や産休の制度も非常に充実させています。

金村:女性が働きやすい環境作りで、特に喜ばれている制度はありますか。

鈴木:1時間単位で取得できる有給休暇などが好評ですね。思いつくことは全部試してみようという精神で、福利厚生をアップデートし続けています。

社長のおごりランチから生まれる信頼関係

鈴木:社員間の交流のために「社長のおごりランチ」というのもやっています。会社負担で、4人くらいのランダムなグループでランチに行ってもらうんです。

金村:部署の垣根を超えたコミュニケーションが生まれますね。

鈴木:他にも、社員旅行に家族を無料招待したり、バーベキュー大会を開いたりしています。以前は少し恥ずかしくてできないような雰囲気もありましたが、今はそういう地道な取り組みが、社員の定着や信頼関係に繋がっていると実感しています。

信頼される「ものづくり」を次世代へ繋ぐ

金村:最後に、鈴木工務店としてのこれからのビジョンについてお聞かせください。

鈴木:建設業は「ものづくり」です。自分が携わったものが形として残り、何十年か経ってからも「まだちゃんとあるな」と思える。この喜びを次の世代にも伝えていきたいですね。

金村:形に残る仕事だからこその誇りがありますよね。

鈴木:そのためにも、DXなどで負担を減らしつつ、若手が誇りを持って入ってこられる会社であり続けたい。地元の方々に「鈴木工務店に入りたい」と言ってもらえるような、信頼される組織をこれからも作っていきたいと思っています。

■株式会社 鈴木工務店 https://www.suzuki-komuten.co.jp/
■FMふくやま https://fm777.co.jp/

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