宮地電機が「期待を超える感動」の提供に挑戦
更新日:2025/11/18
電材商社として四国トップのシェアを持つ宮地電機(高知市)が、2期連続で増収増益を実現している。2024年度の売り上げは8年ぶりに150億円を突破し、25年度も165億円を記録。宮地貴嗣社長は「主力である電気設備機器の販売が好調であるが、これまで研究を重ねてきたニーズの高い省エネコンサルティング事業が軌道に乗り、商圏の拡大を展開できたことも追い風になった」と分析する。祖父の恒治氏が戦災復興を目的に創業し、戦後は高度経済成長期の建設ラッシュを背景に、業績を成長させてきた。その後も、業界に先駆けて照明事業に参入するなど、着実に事業規模を拡大できている。


不動産ディベロッパーを経験後、宮地社長が同社に入社したのは1993年。新規事業であるレストランやウエディング会場、雑貨店などを併設した商業施設「ラ・ヴィータ高知店」の立ち上げなどに携わった。オープン当初は1週間で1万人以上が訪れる状況を作り、知名度は飛躍的に向上できた。しかし、景気後退や人口減少などにより、収益面では長年苦戦を強いられたことで、「社内の風当たりも強くなっていた」と当時の状況を振り返る。このような現実に直面したことで、宮地社長は企業文化の変革を決意。サービス業から学んだ「全てのお客さまを一見客だと思って接する」「とにかくスピーディーに、お客さまの期待を超える対応をする」。父から伝授された飲食店で3分待たされたらリピーターは消えると言われる「3分以内のグッドタイミング」の概念を、全社に持ち込んだことが「会社強化の大きな転機となった」と誇らしげに語る。その一方、当初は機器販売に主軸を置いていたが、2011年の東日本大震災に本格化した「省エネコンサルティング事業」は、既に会社を牽引する存在として確立。「エネルギー課題を診断し、最適な解決策を提案する。単にモノを売るだけでない『顧客視点』の実践を今なお続けられている」と話す表情には晴れやかな笑みが滲む。



宮地電機は、今年9月7日に創業80周年の節目を迎えた。新しく策定した経営理念は、「期待を超える感動を」。社員一人ひとりがこの理念を体現できるよう、DXの加速化により業務の標準化を目指している。機械がした方がよい仕事は機械に任せ、人間がやるべき仕事に集中する。新しいシステムの導入には、慣れない業務に戸惑う社員からの抵抗もあるが、宮地社長は「これは社員がより働きやすくなるための投資。長期的な視点で見れば、必ず会社全体の力になる」と粘り強い改革を進めている。サービス業から突破口のヒントを得るなど、あらゆる分野から可能性の拡張を続ける宮地電機。その根幹にあるのは、顧客に対しての「心地良い暮らし、調和の取れた環境、最適省エネルギーを実現したい」という強い信念に尽きる。時代の変化が激しさを増す中、宮地社長は今後どのような決断を下していくのか。この軌跡の延長線には新たに何が生み出されていくのか興味が尽きない。


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この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。








