橋本工業が盤石な体制下での進展に備える
更新日:2025/12/11
「これまで『運』で生き延びてきた要素が強い」。

株式会社橋本工業(京都府舞鶴市)の橋本薫社長が、取材中に実感を込めて語ったセリフである。コロナ禍で仕事が確保できず苦しんでいた際、唐突に大手ゼネコンから「御社が資材置き場として、高速道路付近に所有している土地を有料で貸してほしい」との連絡があった。社内の経営状況は火の車。本来なら「もちろんです!」と即答する場面だったが、反射的に「『お金は一切いらないので、お仕事を頂けないでしょうか?』と口にしており、自分でも驚いた」と当時を振り返る。このたった一度のチャンスを見事にやり切ったことで固い信頼が生まれ、「そのお客さまとは、今もなお良いお付き合いが続いている」と胸を張る。同様のケースは今まで何度も起こしており、運だけでない1つの糸口を長期的な関係に繋げる能力が長けている。


祖父が足場工事会社を経営していた橋本社長は、中学生の頃からお小遣い目当てに放課後の多くを建設現場で過ごした経験を持つ。祖父の会社を継ぐという選択肢もあった。しかし、制限のない環境を好む自身の性格から、個人事業主としての活動を決断。次第に規模が拡大し続ける状況を考慮し、2013年に法人化を決意した。鳶工事の熟練スペシャリストとして、法面や橋梁、大型の建築案件などを強みにしており、人々の暮らしを支える縁の下の力持ちとしての使命を果たしている。直近で意識するのは、「協力会社を着実に増やしていくこと」。社内では、図面制作や安全管理などの強化も進めており、「近い将来は、1次下請けとしての役割を確立していくことを目指す」と明確な意欲を示している。

橋本社長は、業務推進における最優先事項を「技術を磨き、顧客満足度を上げ続けること」に設定している。理由は、「この点を怠らなければ、自ずと評判は広がり、社内外に良き流れを生み出せると確信しているから」と明言する。今後の組織運営において、最も重要になるのは間違いなく「人材採用と育成」。地道ではあるが一歩一歩、着実に知見を伝授できる社内体制には定評があり、「近々にも誰が入社しても一人前に育てられる体制を作り上げたい」と目標を話す。業界全体で高齢化・人手不足が叫ばれて久しい。しかし、橋本社長は「この難局を所属するACCESSの組合員とも連携することで乗り越えていきたい」と覚悟を見せ、今後も飛躍を遂げていくことを誓った。


この記事を書いた人
クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。








