目的達成に向け、くれよんが組織強化の盤石化をスタート
更新日:2025/4/4
くれよん(大阪府富田林市)が、電気工事を手掛ける20名以上の職人集団として成長を遂げている。代表取締役社長を務めるのは、創業者でもある稲田弘樹氏。創業当初は、それまでの経験を活かし、OA機器・コピー機などの販売を手掛けていたが、防犯カメラの設置を請け負う中で、電気工事の分野にも進出。案件を積み重ねるごとに評判を呼び、「徐々にだが、電気工事会社としての生きる道を確立した」と振り返る。協力会社に丸投げするだけでは、利益率は悪くなる一方と悟り、社員として職人を育成する展開を決意。「施工管理にも力を入れることで、もっと視野を広げるべき」とのアドバイスも忠実に守り続けたことが現在に繋がっている。


会社設立以降、がむしゃらに走り続けてきたが、6年目を目処に「社内体制を整備する必要性を感じた」とターニングポイントを語る。自力だけの改善・改良に限界を感じ、間もなくコンサル会社と連携する方針を策定。組織として永続できる会社を目指すようになり、採用面では雇い切れない程の入社希望者が集まる結果を残すことができた。特に稲田社長自身は、SNSの配信に気を使うように変わり、「それまで感覚的だった内容を言語化できるようになった。継続的に経営者としての理念を発信したことで、応募者は明確な意思を持ち当社を選ぶように変化した」と好循環の要因を明かす。現在は、社内教育の徹底による、社員全体のスキルアップを目論む。「若手・中堅が多い中、技術力の底上げを実現することは至難の業。現場独特の空気感までも仕組み化することは困難を極めるが、『職人の仕事は、現場で働いてこそ意味がある』という普遍的な価値観の浸透を目指したい」と長期的な視野も併せ持つ。


稲垣社長は、当面の目標を「40人の職人を確保し、売り上げ10億円を目指すこと」に設定した。「何となくだが電気工事の職人集団としては、ここが臨界点になる気がする」と感じており、「1人当たりの売り上げも、約2500万円を目安にする」と判断。もちろん組織拡大には技術的な面だけでなく、人間的な器量も重要なテーマになると熟知しており、今後は社内に定着させたい概念として、広い意味で「同じ釜の飯を食べること」、「裸の付き合いをすること」、「趣味を共有する場を設けること」を挙げる。体育会出身者として心身共に鍛え上げてきた、稲田社長ならではの着眼点であり先行きが興味深い。「世の中のインフラを支えているのは、紛れもなく私たち職人。現在地は道半ばの状況だが、今できる様々な取り組みを具現化できるよう、引き続き小さな挑戦を重ねていきたい」と見通しを述べる。稲田社長は、今日も建設業界の未来に光を灯す努力を続けている。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。