東武谷内田建設がDX駆使の盤石体制に挑戦
更新日:2026/1/14
東武谷内田建設(東京都墨田区)には、1970年代から職能別の人事制度を構築してきた歴史がある。東武鉄道(東京都墨田区)で10年ほど勤務経験のある谷内田昌克社長は、「入社当初、古巣より進んだ体制を作り上げていたことに驚きを隠せなかった」と率直に語る。その後、間もなくして自らの意志により、人事制度の改定と会計システムを刷新。成果主義を重視していた状況に対して、「施工条件が厳しい現場の方が労働量は増えるにも関わらず、査定には反映されにくいなど、様々な部分で整合性が取れなくなっていた。利益基準だけで評価する手法からの脱却を図りたかった」とターニングポイントを振り返る。


谷内田社長は、「現在も当社では、個人にノルマを割り振ることはしていない」と明言する。全社員が最善を尽くした結果、利益が出れば全社員に賞与を出す仕組みを採用しており、時代によって変わる課題に対応するため、その都度マイナーチェンジを繰り返しているという。従来から続けていた社員が各々で記録する「目標管理シート」に関しては、「自ら定めた目標により管理することで個人のモチベーションが維持できるよう、あえて評価からは切り離すように」と指示。「どれだけ制度を完璧にしても、マネジメント層が趣旨を理解して実行しなければ、全てが崩れ去ってしまうが」と微笑みながらの謙遜を見せつつ、常日頃から「会社としての一体感」と「社員の知見向上」を両立するための組織づくりに専念している。


近年では、「人手不足や残業上限規制の問題に対応するため、可能な限りDXの導入を進めている」と現況を話す。2025年からはAI開発に取り組む企業との共同プロジェクト「YACHIDA・TAKUMIRAI」に着手。経験豊富なベテランに安全管理・提出書類・工程チェックなどに関する詳細なヒアリングを実施し、その内容をAIに流し込むことで、何か質問をすると回答できるシステムを稼働開始させるなど、今まで同社が蓄積してきた技術・経験の断絶を防ぐ努力も始めている。「当社では、特に30~40代の技術者が不足しており、需要は増えているにも関わらず、既に工期延長や受注時期の遅延を依頼せざるを得ない状況が生み出されている。このような事態を回避するためにも、採用に注力しつつ、今あるリソースを最大限に活かすことで難局を乗り切りたい」と改めて決意を示す。


谷内田社長に今後の目標を聞くと「売り上げ150億円を安定的に創出できる体制を定着させること」との即答があった。2024年度に150億円以上の売り上げは達成しているが、「時代の趨勢に関係なく、継続できる組織を構築することが重要」と強調する姿が印象的である。2023年度と2024年度は、東京都土木建築健康保険組合主催の「事業所対抗軟式野球大会」で連覇を果たすなど、社内には今までにない活気が溢れている。「ものづくりを通じて関わる全ての人たちの笑顔を造ります。」を経営理念に、創業から100年近く培ってきた同社の 「ちから」 を存分に発揮するため、谷内田社長は今日も試行錯誤を繰り返しながらの組織運営に全力を尽くしている。

この記事を書いた人
クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。









