クラフトバンク総研

売上100億円を見据え、ヤマサが伝統と革新を融合へ

更新日:2026/1/27

ヤマサ(高知市)は、今年の夏に本社と倉庫を移転することを発表した。新たなステージとして選んだ移転先は、高台に位置する工業団地。BCP対策を抜本的に強化するが狙いであり、新拠点には鋼材の一次加工設備を導入することを決定している。山下元行社長は、「これまでの卸売に加え、自社で加工機能を備えることで、お客さまの細かなニーズに対応できる体制を整える。業績拡大に向けた動きを加速させたい」と決意を示している。

山下社長は、鋼材・建材商社大手の小野建株式会社(本社:福岡県北九州市)の大阪支店・四国営業所(愛媛県松山市)で勤務後、2022年に同社がヤマサを連結子会社化した際に、代表取締役専務として参画した経緯がある。「経営経験がない中での代表権付与に、プレッシャーも大きかったが、新規拠点を立ち上げた実績を武器に組織の再構築を手掛けた」と当時の様子を振り返る。着任直後は部署間の壁を壊すことを心掛け、それまで1階・2階と分断していた執務エリアを1階に集約。6つあった営業部門を1部門とし、それぞれのセクションに存在した垣根を取り払えたことで、営業部門の統合に成功した。トップダウンではなく、対話で「変わりたい」という多くの社員の声を反映させたことで、一体感を持つ会社に変貌を遂げられた。

現段階での最優先事項は「営業力の強化」。営業支援ツールを積極的に導入するなど、DXの加速化も実施している。「当初は反発もあった。しかし、社員には『目的は監視ではなく、個々の感覚に依存していた業務を組織の共有財産に変えること』と粘り強い説得を決行。今では、小野建グループの中で最もDX駆使を実現する集団に生まれ変わりを見せ、属人化から脱却した営業体制を確立している。

現在、ヤマサの売り上げは約70億円。会社としては、2035年までに100億円の大台に乗せることを目標に掲げており、山下社長は今後3年間を「土台作りの期間」と位置付ける。本社・倉庫の移転というハード面の刷新と併せて、近々にも四半世紀ぶりとなる新卒採用も再開する方針である。「最新の設備と効率的なデジタル環境を整備することで、若い世代が『ヤマサで働けて良かった』と誇りを持てる職場を提供したい」と未来に向けた構想を語る。原動力となるのはお客さまと一緒に高知が発展する礎となり「鉄を通じて地域社会に貢献する」という強い信念。創業から100年以上もの歴史がある会社は今、伝統と革新の融合に挑戦しており、山下社長はこの化学反応を良き方向に導くため、今日も全身全霊を傾けている。

新着記事

  • 2026.05.26

    DX駆使による高度人材の育成に集中へ 東京朝日ビルド

     「正直戸惑いの方が大きかったが、この経験を糧にすると腹を括ったんだ」 東京朝日ビルド(埼玉県草加市)の広瀬慎吾社長は、微笑みを浮かべながら親会社・竹中工務店から辞令を受けた当時を振り返る。入社以来、現場の最前線を一貫し […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一
  • 2026.05.22

    沖縄営業所の開設を機に、栄港建設が可能性を探求へ

    オーダーメイド建築を手掛ける栄港建設(横浜市港北区)が、今年3月に沖縄営業所を開設した。1982年の創業以来、本社一拠点体制を貫いてきた同社にとって、初の県外進出となる。岡田雅人社長は「沖縄進出は確かな戦略に基づいた一手 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一
  • 2026.05.19

    防災設備が唯一無二の存在へ。矢野防災設備が掲げる地域主体の経営

    矢野防災設備(三重県四日市市)の矢野陽一社長は、「地域社会への奉仕と誠実な事業展開」を理念に掲げ、力強く組織を牽引する。祖父・政男氏が1959年に創業した同社は、消防設備の設計・施工・販売などを専門的に手掛けている。長年 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一
  • 2026.05.15

    創業100周年を見据え、中林建設が組織転換

    中林建設(静岡県三島市)では、トップダウンからボトムアップ型への組織転換に取り組んでいる。佐野竜司社長は、「社員の声を吸い上げ、一人ひとりが自律的に動ける組織を目指したい」と思いを語る。自身は家業で現場監督として経験を踏 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一