大熊芳彦さん(株式会社大熊工業・代表取締役社長)
更新日:2025/11/3
実父の意思を継ぎ、36歳で社長に就任してから35年が経過。「若かったが、就任は早い方が良いと判断した」と当時を振り返る。以来、経営の本質と左官の存在価値を問い続けており、「現場での丁寧な手仕事こそが左官の真髄」と、追求してきた姿勢が今の会社を支えている。文化財から土木、関東圏の大型現場まで幅広く手掛け、下水道のような人目につかない施工でも一切の妥協を許さない。「仕上がりの美しさを徹底し、他社と差別化を図った結果、営業を置かずとも依頼が絶えない環境を作り出せた。確かな技術と機動力が評価されている」と胸を張る。


大きな課題の1つに「次世代への継承」を挙げる。自社職人の高齢化に加え、機械化や省力化が進み、効率やコストが優先される現場も増えている。「無駄の排除が強調される流れの影響なのか、職人の工夫する余地が欠如し始めている」と懸念点を示す。外国人技能者の受け入れも模索するが、「熟練には10年は必要。せっかく育っても3〜5年で帰国してしまう現実を前に躊躇している」と苦悶する姿がやるせない。

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機械やAIが台頭する時代に突入したが、「素材の温かみや職人の手跡といった『手仕事の価値』が再び見直されている現状をチャンスに変えたい」と力を込める。昨今では、左官ならではのデザイン性や美観への要望が増加しており、「人の手で作品を作り、人と人を繋ぐのが『ものづくり』の本質」と語る眼差しに迷いはない。受け継がれてきた技と志。

左官の誇りを次世代にも刻み 続けるために、大熊社長は今できる最善策に全力を尽くしていく。
株式会社大熊工業のHP:https://www.o-kuma.jp/
この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。







