神奈川県鉄筋業協同組合
更新日:2026/3/31
【設立60周年を迎えて】
神奈川県鉄筋業協同組合が2024年に設立60周年を迎え、次なるフェーズに向けて歩み出た。現在、9代目の理事長を務めるのが工藤桂一氏(イー・ケー・エス 代表取締役)。就任当初を振り返り、「当時、コロナ禍で多くの組合活動が制限された状況が悔しかった。制約のある中でも若者の採用と育成に向け、あらゆる施策に心血を注ぐと誓ったことが昨日のようだ」と語る視線は今なお熱を帯びている。絶大な信頼を寄せる海老原淳副理事長(サンワ工業)と門井正仁副理事長(門井工業・代表取締役)、石山勝則副理事長(石山鉄筋・代表取締役)らと共に、組合運営の舵を取り、業界内に変革をもたらしている。


【発注者との橋渡し役を果たす】
工藤理事長は現在、全国鉄筋工事業協会・理事の役職も兼務している。神奈川県鉄筋業協同組合の青年部長に就いていた頃からの幅広い人脈を活かし、全鉄筋や全国建設専門団体連合会など、様々な団体の会合に参加。そこで仕入れた情報を組合員に積極的に共有することで、業界を活性化する具体策を模索する。「CCUSや標準労務単価、設計労務単価など、業界を取り巻く情勢は刻一刻と変化している。核心的な課題である業界と職人の地位向上や、給与アップに向け、団体を通したアップデートが肝要だ」と分析する。会員が集まる機会を増やすため、年間3回の行事を5回に追加。このような継続の甲斐もあり、組合は現在進行形で関連団体や国土交通省など、発注者側との重要な橋渡し役を果たしている。

【会員増加とDX推進の課題】
工藤理事長は「業界の地位向上に向け、組合が果たす役割は大きい」との信念を胸に、実現には「より多くの企業参加が不可欠」と主張する。県内には100社近い鉄筋工事業者が存在している。しかし、組合に加入している会社は半分にも満たない40社。多くの施策を展開する組合だが、現実として「メリットを作り切れていない」と冷静に現状を受け止めており、誰もが加入を目指す組合に向け、日々の改善・改良を繰り返す。近年では、それらの思いを具現化するべく、組合が管轄する事務業務のペーパーレス化にも着手。従来、FAXや郵送などで回収していた出席確認やアンケートはExcelに転記。工藤理事長の発案により、Googleフォームに集約し運用したことで、業務の効率化も大幅に推進しているという。


【新たな挑戦にも着手】
組合では、日本青年会議所が開催する「屋内おしごと体験」にも出展。子供らに工具を使用した結束・切断や、VRによるガス溶接を体験する機会を提供する他、神奈川圧接業協同組合との連携により、工業高校にて出前講座にも参加している。日々の多忙な業務の中でも様々な活動に携わる動機は、「建設業界への入職希望者を少しても増やしたいから」。全会員の生活をより豊かにするため、時間外労働規制や完全週休2日制を運用し、「属人的な手法からの脱却」を目指す。既にAIを活用した職人向け育成プログラムや、車両・資機材のリアルタイム追跡、専門用語のオンライン検索システムの利用など、DXを含めた新たな導入も始めていることが特徴である。

【業界改善に向けた施策を続ける】
途切れることなく、次の手を打ち続ける工藤理事長。原動力は「鉄筋コンクリートに命を吹き込む」という明確な使命である。東日本大震災の惨状を目の当たりにし、木造の建造物が甚大な被害を受ける中、鉄筋コンクリート造の学校や病院は崩壊せず復興の足掛かりとなった。このような光景は、今なお人々の記憶に「鉄筋は、多くの人命や財産を守れることができる」と深く刻み込まれており、工藤理事長は「まだ我々が為すべきことはある」と前だけを見つめている。「一人の100歩より、100人と共に1歩ずつを切り拓いていく」をテーマに掲げる神奈川県鉄筋業協同組合。次なる節目は設立70周年を予定しており、既にそれに向けた業界改善への思索はスタートしている。
この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。







