ファーストコーポレーションが、売上1000億円に向けた取り組みを開始へ
更新日:2025/9/30
ファーストコーポレーション(東京都杉並区)は2023年夏頃、工事部内に「建設ディレクターグループ」を創設した。同グループは、建設現場運営に掛かる負担軽減を目的に、書類関連の社内業務などを5人体制でバックアップする新たなチーム。昨年4月に施行された残業時間・上限規制罰則化を見据え、約半年間の入念な準備により、社内のワークライフバランスの整備を徹底。現在では、現場の8割が4週8閉所、2割が4週6閉所を実現しており、社員の休暇日を確保した現場運営を実施している。中村利秋社長は「グループを組成してから、現時点で全体の残業時間を2/3までに抑え、上限超過者は0人を達成できている。常に時代に合わせた経営を心掛けることで、最前線で成果を残せる組織作りを意識している」と基本方針を述べる。

ファーストコーポレーションは2011年6月の設立から、3年10ヶ月で東証マザーズ、5年7ヶ月で東証1部に上場を果たした異色の実績を持つ。中村社長に要因を聞くと、「アベノミクスや東京オリンピック開催決定の波に乗れたこと。また、長引く不景気の影響により、有能なIRや内部監査員を採用できたことなどが挙げられるが、いずれも運や縁に恵まれた結果と捉えている」と微笑みながら謙遜する。しかし、実態を見ると、仕入れたマンション用地をデベロッパーに事業提案する「造注方式」を急速に確立し、積極的に超高層建築物の施工・市街地再開発を進めたことで、業績の構築ができたことなどが見て取れる。近年では、九州や青森などの地域でも再開発案件を手掛けるなど、独自手法による地域経済の活性化にも着手しているようだ。

目下の課題は「若手の入社希望者が増えるよう、会社のアップデートを続けること」。もはや、働き方改革に順応したワークライフバランスの完備は必須事項であり、「とにかく無限に可能性のある若くて優秀な人材を獲得するため、会社の体制も時代に適した形に変化させていく」と柔軟なスタンスを示す。来年度には17~18人、再来年度は30人の新卒を迎え入れる計画もある。ファーストコーポレーションには、新入社員として入社後、早ければ10年で所長になれる人材も増加している。特に若手・所長に対しての研修は手厚く、管理栄養士を講師として迎え、食品学や栄養学など食育を学ぶ講義は定評があるという。良好に形成された社内の雰囲気に、若手の新たな活力が融合するという特有の現象も表れている。

中村社長は、会社グループとしての中期的な目標を「売上1000億円に設定した」と宣言する。現在の会社全体の売上は430億円強。既にIR部門などには具体策を指示しており、会社設立からの飛躍を考慮すると、想定より早く達成する可能性も高い。目的地に辿り着くまでの必要条件は「優れた新卒を数多く採用し、その人材を飛躍的に伸ばせる社内環境を強化すること」。「当たり前のことを当たり前にやる」という会社の理念を基に、今後もファーストコーポレーションは未来志向の経営方針で、事業を展開していく方針である。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。