若手の採用・育成改革が好調のダイニッセイ。鉄の結束で難局打開を目指す
更新日:2025/5/2

ダイニッセイ(千葉県市原市)が取り組む、若手人材の採用・育成に向けた改革が着実な効果を上げている。創業者・池田愼二会長の方針で、これまで50年以上も職人を社員として雇用することにこだわり、独自の経験やノウハウを蓄積・共有してきた。池田洋一社長は、「頼りになるベテランが多く在籍する今こそ、若手への技術継承に集中し、新たな仕掛けで組織を活性化したい」と採用強化を決断。大卒求人や高校への出前講座、インターンシップ、オンライン説明会などの充実化により、将来の会社を担う新卒学生たちが、採用事情の厳しい中でも毎年入社するよう変化した。

採用の改革に当たり最初の障壁となったのは、「休日」の問題。池田社長は、入社の意思表示をする学生から「会社の雰囲気も良いし、現場の仕事にも興味がある。ただ、やはり週休2日の会社に行きたい」と言われたことを契機に完全移行を決意。同業者内では、「どうせ、もう若い人は来ない」と諦めの空気が充満する中、「このままでは本当に若手採用ができなくなる」と、迅速な対応を実施したことが現状打破に繋がった。採用と並行し人材確保の面でも、「公正・公平なルール作りが必須」と人事評価制度の変革に着手。直属の先輩と上司、社長が3段階でオープンに評価する方式も好評で、「雇用条件や給与面を含め、不明点はすぐに答えられる、隠し事のない体制の構築を進めている。年に2回の評価面談で、社員の1人ひとりとじっくり話す時間を作れたことが、何よりも効果的だった」と振り返る。また、池田社長の「会社に興味を持つ人がいるなら、活躍できる場所は無理をしてでも作る」という意志に基づき、当初予定のなかった大卒の女性社員が求人採用・広報担当として入社。これによりInstagramや旧TwitterなどSNSの更新頻度も加速し、社員だけでなく協力会社との関係性・連携が更に強化したことからも、一連の改革が良い循環を生み出していることが分かる。


これまでダイニッセイでは、先の労働力不足を見据え、生産性向上や職人の負担軽減を目的にした様々な挑戦を続けてきた。その中でも最大の武器になったのが、「ジャバラユニット工法」。特殊なゴム付き結束線を使用し鉄筋を組み立てることで、自社工場で組み立てた鉄筋をコンパクトに折り畳むことが可能になり、従来から2~3割程度の業務効率化を実現。数年前からはBIMの取り組みも開始し、「いずれはゼネコンの壁を越えて成果が残せるように」とチャンスを伺っている。創業当時から「全員が得意な分野に専念してほしい」という思いから、社内体制は現場・工場・施工図作成の分業制を敷いており、絶妙なバランスで三位一体を成立させている点も特徴的である。

会社の理念を「鉄の結束で未来を造る。」と銘打つ通り、池田社長はダイニッセイを下支える骨格は「技術力とチームワーク」と断言する。「現場作業は正直、厳しい仕事になる。しかし、仲間と共に汗を流し、ものづくりの喜びを味わえることは何物にも変えられない」と熱く語る。社員には、会社および自身の技術力に対してプライドを堅持することを重視し、それこそが「鉄筋工事での技術力No.1」に直結するという信念は誰よりも強い。最近では、鉄筋工事コンサルティング業や、鉄筋のBIMフルモデリングなども手掛け、会社としての可能性を拡張し続けるダイニッセイ。社員の向上心を会社全体で応援できる同様の組織が、徐々にでも増加することが業界改善の一歩に繋がることは間違いない。

株式会社ダイニッセイのInstagram= https://www.instagram.com/dainisay8854/
株式会社ダイニッセイのX(旧Twitter)= https://twitter.com/dainisay
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。