次世代に向けたドローンの可能性を、エアロセンスが拡張
更新日:2025/5/2
「ドローン技術で変革をもたらし、社会に貢献する」をミッションに掲げるエアロセンス(東京都北区)は、今年5月に本社を東京都北区に移転した。同社は、2015年8月に現ソニーグループ(同港区)とZMP(同文京区)の合弁によって設立されたドローンメーカー。産業用ドローンの開発・製造・販売などを手掛け、ドローンから取得したデータをクラウド上で管理し、測量・点検などのデータ分析なども提供している。

(新オフィス受付(左)とオフィス内(右)コーポレートカラーのブルーで統一している)
佐部浩太郎社長は、「事業規模が大きくなるにつれて、在庫管理や研究開発、屋上でドローンの試験飛行などができる環境が必要だと移転を決めた。実際に新オフィスでの活動を開始すると、同じフロアに居るエンジニアと営業担当が活発なコミュニケーションの後、新たなアイデアが生まれる瞬間を何度も目にしている。『技術革新は議論の活性化から』という観点に立ち、引き続き新オフィスで、これまでにない挑戦を行いたい」と意気込みを語る。エアロセンスは、ドローンのハードウェアからソフトウェアまで、自社内で一気通貫の開発体制を持つ。これにより、機体から解析ソフトまで、様々な産業分野で使いやすいソリューションを提案できることが強みだ。なぜ創業当初から、この体制を構築したかを聞くと、佐部社長は「付加価値とセキュリティーの要素も大きかったが、初期はお客さまが本当に必要な製品を提供しなければ次はないという危機感から、注文を受けヒアリングしながら開発を進めてきた。この繰り返しを経て、技術の向上と同時に、ある程度の型ができ製品の一般化に辿り着けた」とこれまでの経緯を話す。操縦・安全のアドバイスから定期点検まで、顧客と伴走するアフターサービスも充実しており、エアロセンスのドローンは現在、全国3000カ所以上の現場で活用されるようになった。

(有線ドローン「エアロボオンエア」(左)と光電複合ケーブル全自動巻取機の「エアロボリール」(右) 「エアロボリール」は新機種として⼩型・軽量化された)
現在は、VTOL型ドローン「エアロボウイング」と、有線給電による連続飛行が可能な「エアロボオンエア」の販売強化に注力する。佐部社長は「この2機種を中心に、行政ニーズに応えるための事業展開を図っていく」と先を見据える。昨年12月に改正航空法が施行され、無人航空機の「有人地帯の目視外飛行(レベル4)」を認める形となった。佐部社長は、この現実に対し「国産ドローンメーカーとして、機体性能の向上と販売促進を図ることで、ドローンを社会に浸透させ、社会実装を拡大するチャンスとして活かしていきたい」と考えている。

(VTOL初代機(左)と現行機「エアロボウイング」(右))
エアロセンスは今年6月、内閣府が主導する「経済安全保障重要技術育成プログラム」に採択された。同プログラムは、日本が国際社会で確固たる地位を維持する上で、不可欠な重要技術の研究開発・成果などを推進するもの。これを受けエアロセンスは、2年後に次世代の大型VTOLを完成させ、ハイエンド機体として製品ラインアップに追加する方針を固めた。佐部社長は、「少子高齢化に伴う労働人口の減少が深刻化する中、ドローンが役割を果たせる機会は非常に多い。当社の製品が、社会にある課題を更に解決していけるよう、技術の研鑽を前提とした組織運営を続けていきたい」と展望を語った。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。