日本の中心から飛躍を目指す。アクールが掲げる新たな野望
更新日:2025/4/29
兵庫県で解体工事業を主軸に不用品処分や外構工事などを手掛けるアクール(兵庫県西脇市)。解体工事や遺品整理の機会を、「終わり」ではなく「新たなスタート」と位置づけ、日々業務に励んでいる。

谷川和昭社長は医療機関に12年間勤務し、広報や人事などを担当した経歴を持つ。その後、実父の跡を継ぐ形で2016年に入社し、同年には法人化を実施した。現在では、継承時に3人だった社員数を24人に増員し、当時の50倍近くの売り上げを記録するほどに成長。社長自身は、解体工事施工技士を取得しており、現場から全業務に携わる他、現在も自らが社員育成を行う。多くの解体業者が日給制を選ぶ現実に対し、谷川社長の「社員には住宅ローンを組ませたい」という強い思いから、アクールでは月給制を採用。待遇改善を通じ、職人が誇りを持って働ける職場環境作りを目指している。

短期間での躍進の裏には苦労もあった。「特に大変だったのは入社直後。もちろん金銭面でも苦心したが、人員確保に悩む日々が多かった」と語る通り、「求人広告を出しても反応がない。応募があっても当日面接に来ない。採用しても定着しない。前職ではこのような経験はなく、本当にカルチャーショックだった」という。給与の支払いにも苦労するなど八方塞がりの日々が続いた。営業活動を続ける中で、「顧客から解体業に対するマイナスイメージや、従業員に対するクレームなどを直接ぶつけられたこともあり、心身共に疲弊したことも多かった」。


突破口となったのは、社内研修として挨拶や服装といったマナーの指導を社長自らが手掛けたこと。自身の経験を活かし、指導ではとにかく意見を聞き、褒めることの徹底により、人材の定着を促進。「最初は反抗的だった社員も、理解され認められ始めると徐々に心を開き、仕事への意欲や成果の面で良い影響が生まれ出した。今も課題は残る状況だが、大きな改善を見出せた良い手法だった」と当時を振り返る。最近では、社長からの「称賛」を取り合うかのように、自主的に作業クオリティーの向上や、資格取得に励む社員が急増する現象が続出。谷川社長は「周囲から『何か宗教みたいだな』と揶揄されている」と照れながら謙遜するが、社員が自らの意思・信念の下で成長を目指す循環を作るなど、「会社の躍進」を語る上で欠かせないエピソードが多く創出され、社内は活気に満ち溢れているようだ。

積極的に取り組み続けている地域貢献活動も好評で、クリスマス期に子ども園で組み立てた8mのオリジナルツリーやシークレット花火。これまでの様々なアクールの活動が地域住民の心に焼き付いており、業界のイメージ・知名度の向上に一役買っている話は有名である。
谷川社長は、今後取り組む課題として「週休2日制の対応」を挙げる。「休日を確保するには、より工事・作業に注力できる環境を整備するなど、新たな対策が必要だ。現状では近畿を中心に活動しているが、これからは対象エリアや事業領域の拡大なども検討したい」と先を見据える。谷川社長には10年後に向けての野望もあるようで、今後の活躍に期待がかかる。
アクールが拠点を置く西脇市は「日本のへそ」とも言われている。日本の中心からアクールがどのような飛躍を遂げていくか注目である。
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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。