クラフトバンク総研

旭堂看板店が「粋な仕事」で、愛知県No.1のロープアクセス企業を目指す

更新日:2025/4/25

「2026年度中に売り上げ3億円を実現する!」

 愛知県でNo.1のロープアクセス企業になることを目指す、有限会社旭堂看板店(愛知県名古屋市)の水谷俊彦社長が掲げた目標である。「プロ集団として、顧客の期待を上回る『粋な仕事』を続ければ必ず達成できるはず」と自信を覗かせる。低コスト・短納期・場所を選ばず施工可能など、これまで以上にロープアクセスの特徴を活かせれば可能だと考えての表明であり、今後の躍進が興味深い。

 祖父が創業した旭堂看板店は、水谷社長にとって身近な存在だった。幼い頃からものづくりを好んで取り掛かってきたこともあり、「とりあえずやってみよう」との思いで家業に参画。祖父と父を師と仰ぎ、18歳から28歳までの10年間を職人としての技術研鑽に捧げた。しかし、2008年に当時の売り上げの50%を占めていた大手コンビニチェーンの下請け工事が受注できなくなる事態に陥る。その後、コミュニケーション不足による大量離職が発生するなど、暗黒期を体験するも、持前のポジティブかつ逃げない姿勢を貫き、現在は「サイン事業部」「LED事業部」「HP制作事業部」を確立。社内行事を充実させるため、社員の意見も柔軟に取り入れ、風通しが良い社風を構築したことで、安定した経営を達成してみせた。

 紆余曲折を乗り越えた先にコロナ禍が立ちはだかったが、水谷社長は「その時に注目したのがロープアクセス工法だった」と振り返る。看板関連の企業が自社の研鑽を目的に集まる「サインの森」にて、「ロープ工法のパイオニアとしてRASTAQの中野眞佐志社長などの存在を知り、大いに触発された」と語る。すぐに産業用ロープアクセス協会(IRATA)の資格取得に動き、とにかく様々なロープアクセス企業と交流を持つことで、これまで無かった知見を蓄積。現在では、ロープアクセスが自社の屋台骨になるまで成長することができた。「安全・迅速・確実」という強みを活かし、全国を対象に受注件数は右肩上がりを続けている。

 水谷社長は「5~10年後には、社内業務の半分以上をロープアクセス工法に変えるため、当面はこの分野の比率を増やす方針だ」と計画を述べる。「人材を育成し、受注件数を増加させる。協力業者にも資格取得を促し、作業可能な人材を増やさなければ実現できない」と現実とも向き合う姿が印象的だ。数々の逆境を跳ね除け、今なお躍進を続ける水谷俊彦社長。「将来的には、外国人ロープワーカーを育成し、海外顧客の新規獲得を考えている」と野心も口にする。旭堂看板店の粋な仕事が形になり、日本だけでなく世界を駆け巡る日は、いつ頃に来るのか。筆者はこの途中経過こそ意義深く、ロープアクセス企業が注目すべき観点になると考えている。

旭堂看板店のInstagram

RASTAQの関連記事:特集・業界リーダーに迫る「RASTAQ施工で安全最優先の環境を提供」

新着記事

  • 2025.06.04

    技術継承の橋渡し役を担う 日本多能工協会

     2023年8月4日に日本多能工協会が設立された。代表理事を務める人物は、結城伸太郎氏(ゆうき総業・代表取締役)。20歳の時に刷毛一本で独立し、職人不足の中でも若手育成に励み、地道な活動を経て現在地に辿り着いた経緯がある […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.05.30

    久志本組が200年企業に向けた取り組みをスタート

     久志本組(三重県四日市市)の清水良保社長は、日頃から社員に「地域の方から頼られた時に『嬉しい』と素朴に感じられる人であってほしい」と伝えている。会社は、創業から120年以上の歴史を四日市市に刻み続けてきた。シンプルでオ […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2025.05.27

    ショールーム開設のハマニ。左官技術の伝承に全力を尽くす

    「とにかく職人の採用・育成の改革が急務だと感じた」。  左官・土木工事を手掛けるハマニ(静岡県浜松市)の河合滋社長は、慣習として続けてきた「見て学ぶ」「技術を盗んで覚える」という従来の職人文化に限界を感じ、体制の移行を決 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.05.23

    「誰かの笑顔のために」、三瓶工業がDX駆使で新たなステージへ

     ㈱三瓶工業(山形県天童市)は2022年、設立50周年を記念して会社のロゴや制服、ヘルメットなどのデザインを刷新した。アイデア作りからデザイン製作までを一括で依頼した先は東北芸術工科大学。地元の芸大生との連携により、これ […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦