DX推進室を新設の朝日土木。DX浸透で現場の働きやすさを追求へ
更新日:2025/4/25
朝日土木(三重県四日市市)が、2023年5月に「DX推進室」を新設した。室長に取締役の秦真人氏、副室長に山下瑞喜氏が就任。メンバーには、新卒DX採用の桶谷紅羽氏とドアン・ニュン氏が配属され、現場の業務効率化や労働時間削減などを進めている。発足から半年ほどが経ち、現場で20年以上の経験を積んだ山下氏は、「当社は『2024年問題』には概ね対応しているが、単なるデジタル化だけでなく、更に先を行く変革が必要と部署の設置が決まった。これを機に、新たな取り組みを実施しながら、DXの先にある企業としての姿を明確にしたい」とDX推進による組織変革を語る。

(左から秦真人室長、ドアン・ニュン氏、桶谷紅羽氏、山下瑞喜副室長)
竹中工務店で設計業務に10年以上携わった秦氏は、「DX化は、現場とバックオフィスで連携していかないと上手く機能しない。現場へのシステム導入とその習熟度向上、バックオフィスでの効果的なサポートを同時に行うことで、最適な結果を導けるようにしたい」と意気込みを話す。朝日土木では、働き方改革元年である2019年やコロナ禍の直後から、グループウェアやオンライン勤怠管理、ICT施工の活用を始めており、昨年3月に秦氏が入社した頃には、「管理職の理解もあり、既に社内にDX化の下地ができていたのが嬉しい驚きだった」と当初の印象を話す。桶谷氏とドアン氏も、実際のCADを基に点群データやCIMを作成する他、建設ディレクター課程を修了して新たな知見を蓄積するなど、会社全体に今までにない流れを作っている。


現状の課題を秦氏は、「単なるDXツールの導入だけでなく、DXによってどのような新しい価値を生み出せるかが重要」と述べる。DX活用で難しいのは、現場からの理解を得ること。上層部に言われたから渋々システムを使うといったケースに陥らないよう、現場経験が豊富な山下氏が現場との調整を日々行いながら、実情に即したシステムの導入を進めている。山下氏自身も「現場に足しげく通って現状の課題を洗い出し、双方納得の上で活用して貰う形が1番スムーズ」と言う通り、会社全体にDXを定着させるには、気の遠くなるアナログな過程も不可欠のようだ。

秦氏は、「DX推進の着地点は、『人に来て貰える働きやすい会社を実現すること』。建設業は、社会にとって根幹と成す部門。いずれは、既に進めている労務管理に加え、人事評価などにも専門のシステムを導入する方針だが、現時点では段階的にデジタル技術導入のトライ&エラーを繰り返し、当社に合う最適なやり方を見極めていきたい。直近の目標は、社内のDX浸透とDX人材の育成・採用に注力すること。『現場の働きやすさをDX推進室が支えている』とメンバーがやりがいを持てるよう、チームで堅実に業務を遂行していきたい」と展望を述べた。

建設ディレクター協会= https://kensetsudirector.com/
朝日土木のX(旧Twitter)= https://twitter.com/asahidoboku
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。