「期待を超える企業」を目標に、大南工業が顧客最優先を貫く
更新日:2025/5/2
大南拓哉氏が、大南工業(愛知県西春日井郡)の社長に就任してから、間もなく30年を迎える。大南社長は「模索の日々を現在進行形で続けているが、職人たちが支えてくれたお陰で今日に辿り着けた」と振り返る。調理師の資格を取得するなど飲食業界に関心を寄せたこともあったが、かつて資材運びや補助作業で家業に携わった思い出もあり、「跡を継ぐのは自分しかいない」と奮起。31歳で2代目の社長に就くことを決断した。


大南工業は、塗装工事業を中心に、外壁補修工事・屋上緑化工事など多岐に渡る分野に携わる。近年では時代のニーズに応えるべく、リニューアル工事に注力。建造物の改修では、足場架設からクリーニングまで一貫した対応が必要になるため、「チームの連携を何よりも重視している」とスムーズな業務遂行の秘訣を話す。塗装以外にも書類作成や手続きなど掛かる負担は多い。工事完了後の検査や引き渡しまで、全ての根幹にコミュニケーションが重要な役割を果たすことを熟知し、社員にもその普遍的な現実を周知。長い歴史の中で培い続けた高い技術力と細心の気配り。顧客から厚い信頼を獲得するには、一朝一夕では養えない積み重ねが存在していることが理解できる。

大南社長は、所属する全国マスチック事業協同組合連合会では技術施工委員会を務め、組織全体の技術力向上に貢献している。「これまで連合会では保証事業が主力となっていたが、責任施工団体としての使命を果たすには、技術強化は欠かせない」と強調する。現場での実体験を集約し、それを基にした解決策も共有することで、業界全体の進化も手掛けている。委員会のメンバーは、昨年11月に4人から12人に増加した。定期的なオンラインによる打ち合わせにより、マスチック工法の研究や新工法の技術開発、講習会の開催なども可能になり、更なる発展も目指す。「現場の声を活かし、業界の魅力を高めたい」との思いは強く、来年行う予定のアンケート調査にも意気込みを見せている。


現在、大南工業は土木企業と共同研究を進めており、新商材を取り入れた試験的な施工も見据えている。建設業の魅力を「業種と可能性が拡張すること」と表現する通り、これまでにない希望が芽生える見込みもある。「最近では塗装業に加え外装・内装など、携わる領域の幅も増えてきた。競争は激化の一途を辿るが、時代の流れに合致した施工ができるよう、引き続き技術の習得・研鑽に励んでいく」と決意を語る。掲げる目標は、「期待を超える企業」になること。顧客最優先に事業を展開する大南工業の挑戦は続いていく。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。