e-worksが100年企業に向けた体制づくりに着手
更新日:2025/4/29
e-works(静岡市葵区)の創業者である木嶋潮社長は、自社が100年以上継続する企業に変革できる体制作りを目指している。会社設立から17期目を迎え、グループ企業2社を含めると100人の社員を抱える組織に成長した。しかし、これまでを振り返ると、自身がフロントマンとして大部分の役割を担ってきた現実に直面し、今回の決断に至ったという。


現在、会社に所属する最年長の社員は72歳。現場作業も任せているが、年齢的に業務のバランスを取る必要性が生じ始めていること。また、同じように社員が70歳に達した際、別の役割を均等に与えるには、「今から組織化の準備を始めければ、社員の命を守るシステムを構築できないと悟った」と経緯を語る。「自分が抜けても、残された社員一人ひとりに掛かる負担を極限まで減らしたい」という木嶋社長の思いが溢れた動機であり、若手とベテラン双方を考慮しながら慎重に進めている点も特徴的である。「創業時から先輩方に可愛がられることが多い中で現在地に辿り着いたので、年齢の近い方の気持ちは理解できる。しかし、若い社員に関しては意識して寄り添わなければ分からない点があまりにも多い。会社経営に関しては、この点を放置せず、客観的な事実と向き合い続けることが重要だと考えている」と持論を話す姿が印象的だ。


法面保護や無足場でのロックボルト・吹付・土工・仮設構台・集水井など幅広い施工を一手に引き受ける木嶋社長は、自社を「防災工事のコンビニエンスストア」と称している。開業から幾度となくピンチには遭遇してきたが、「不思議とそこから逃げず克服するために全力を尽くすと、すぐに会社が大きくなるチャンスが訪れていた」と振り返る。舞い込んだチャンスとも真摯に向き合い、顧客の需要を最優先にし続けた結果、グループ会社も含めた合計の売り上げは21億円に到達。52歳になった現在、脇目も振れず会社拡大に邁進してきたが、企業永続を勘案すると「やはり、誰が抜けても成長が見込める組織を構成すべき」と次のステージを迎える心構えに変わったようだ。


木嶋社長は、「65歳でフロントマンから降りる」と明言している。「今後、小さな企業の淘汰が進み、中規模以上の会社に吸収されていく現実は避けられないはずだ」と独自の見立てを語る。引退までに残された時間は13年。この時間をどのように使うかを問うと「あらゆる物事に対して全身全霊を傾けて取り組む」とシンプルな形で即答する点も人間性を端的に表している。「建設業は、現場で働く人があってこそ成り立つ魅力的な産業。この先10年単位では労働単価は上がり、かなり高級な業務に変わる分野もあるので、これまでにないチャンスが生まれるシーンも増えていくはずだ。この貴重な時間を次へのステップとして活かせるよう、引き続き今できる最善策を模索していきたい」と常に先を読んだ行動を手掛けていく。



この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。