「職人第一」のアースシフト。事業承継を前に組織基盤を盤石化へ
更新日:2025/4/29
「建設業界で、何が一番大切かと言えば『職人』だ」。
アースシフト(静岡市葵区)の近藤隆智社長(以下・隆智社長)は、創業から直営施工に徹底的なこだわりを見せてきた。このスタンスは、「自社で設計・管理・測量・施工に携わってこその総合建設会社」という信念に基づいており、これまで数多くの職人や監督を育成してきた証でもある。隆智社長は、あらゆる工程での自社施工を続けてきたからこそ、「建設発生土の中間・最終処分場も持ち、緊急時の災害復旧にも対応する万全の体制を築くことができた」と振り返る。「おそらく元請け企業で自社施工を手掛けているのは、全体の2~3割程度。管理のみでなく、多くの職人を抱える企業として歩み続けた軌跡が当社の強みである」と胸を張る。

8年前には、長男の近藤大智専務(以下・大智専務)が、「これからはインフラマネジメントの時代」と、インフラ保全事業部を創設。それまで主体だった一般土木の元請工事から、現在ではインフラ保全関連の専門工事が売り上げの3~4割を占めるようになり、県外の仕事も増加した。特に高所・難所にロープで吊られながら施工するロープアクセス技術の習得以降は、橋梁や法面、補修工事など取り扱う工種の幅が広がり、宮城・東京・大阪・石川に進出するなど顕著な変化が起きている。

アースシフトは創業当初から、どの関連団体にも加盟することはなかった。理由を隆智社長は「業界に新しい風を吹かすには、しがらみのない世界で勝負する必要があったから」と即答する。この思いを集結するため2013年9月には、独自に静岡県新技術協会を設立。インフラ強靭化や防災力向上を実現するため、行政やメーカー、建設コンサルタント、施工業者が一体となり、県内に最新技術や工法、資機材の普及促進を手掛けている。毎年開催する研修会は好評を博しており、直近ではリモート参加も含めると600人近くの建設関係者が参加。会員の輪は県外にも広がりを見せ、業界内にあるハード・ソフト面の課題解決にも全力を尽くしている。


隆智社長は、2025年5月を目処に事業承継する方針を固めた。後継者に指名されたのは大智専務。入社以降、新部署の創設やロープアクセス技術の導入の他、様々なアイデアで地域活性化に貢献してきた実績などが抜擢に繋がった。隆智社長は、新社長に対して「職人を統括する分野での活躍に期待している。当社の根幹は、職人を最優先に考え事業を展開してきたこと。この魂だけは新社長にも引継ぎ、組織を束ねてほしいと切に願っている」と力を込める。昨年、創業40周年を迎え、世代交代も順調に進めるアースシフト。総合建設業のプロフェッショナル集団として、今日もアースシフトの社員は次世代に誇れる仕事に取り組んでいる。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。