子孫により良い時代を残す。ヤマダインフラテクノスが変革と挑戦の継続を宣言
更新日:2025/8/18
「ゴミを減らして世界を変える」。
ヤマダインフラテクノス(愛知県東海市)の山田博文社長が抱く大志である。父が立ち上げた「山田ペンキ」から培われた技術を継承し、原子力発電所の原子炉などの塗装を手掛けた経験を持つ。33歳で会社を引き継いだ後も、「環境配慮」「人材の確保・育成」を最優先に手腕を奮う。これまで固定概念の打破を心掛け、金属系研削材でブラストし塗装くずと選別する「循環式ブラスト工法」を開発するなど功績は計り知れない。同工法は、業界では稀有なCFP(ISO14067カーボンフットプリント)の検証を受けている。また会社としてSBT(温室効果ガス排出削減目標)にも認定されており、「子孫により良い時代を残したい」と更なる成長を目指している。


転機を迎えたのは2005年。国土交通省により塗装の素地処理のブラストが標準化されたことを契機に橋梁塗装への参入を決めた。「当時の工法にリサイクルの概念はなく、輸入された砂で施工すると大量の廃棄物が発生していた。現場ごとに生まれる何万トンにも及ぶゴミを前に、『持続可能と言えるのか?』との問いが頭から離れず、新工法の開発を決意した」と振り返る。約10年の歳月を要したが、造船で用いる技術も応用できたことで、無事に「循環式ブラスト工法」をこの世に生み出せたという。


周囲からは「なぜ費用が高く、手間の掛かる手法を?」と囁かれたこともあった。しかし、山田社長は「環境配慮への重要性が世間に定着し始めると反応も一変した。時代が後から追い付く有意義な体験も味わえた」と感慨にふける。衣浦豊田道路での施工結果が発注者から高く評価されたことで、早期にNETIS(新技術情報提供システム)の登録も実現。2016年に立ち上げた日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会では代表理事を務め、140社を超える会員と共に更なる普及促進を試みる。

山田社長は2021年、リデュースリユースリサイクル推進功労者等表彰の内閣総理大臣賞を受賞した。産業廃棄物の発生を最小限にする環境配慮型ブラスト工法が認められた形となり、受賞を機に積極的な導入を続けている。現在は岐阜大学と鋼構造物の先端リニューアル技術研究を進める他、アメリカ・パデュー大学との研究も深化しており、会社の「第2の柱」となる確固たる部門を模索する。近年では、国境を越えた体制を構築しており、特にベトナムからの技能実習生が活躍できる環境を整備。現地にブラスト技能者育成学校と現地法人を設立したことで、来日前の日本語や基礎技術の講習、帰国後の就職などもバックアップでき、職人を育成するサイクルも確立している。


座右の銘は「己に勝てば、人生に不可能はない」。未来は努力と創造力で掴み取れると固く信じており、決して諦めない一貫した姿勢により現在地まで辿り着けたと自負を持つ。今後はこれまで以上に時代の変化に適した、様々なソリューションの提案が必要になるはずだ。社会基盤や環境を守りながらも、斬新な切り口による突破口も求められる。しかし、山田社長は「より良い未来を築くため、組織や事業の枠を超えた変革と挑戦を続ける」と強い信念を示し、より一層の躍進を果たすことを誓った。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。