「CCUS=FIRST」を定着へ。女性の力による業界変革を目指す。
更新日:2025/5/2
FIRST(埼玉県春日部市)の豊田和覇社長は、父親が創業した総合建設業の正和工業(埼玉県春日部市)に在籍時、現場監督や施工管理、積算、調達・購買など、さまざまな業務を担当していた。当時より頭の中から消えなかった疑念は「建設業界で生産性向上が叫ばれる中、現場監督に向けたITツールは増えてきたが、最も比率の多い現場作業者の負担を軽減するサービスが少なすぎるのでは」というもの。日々現場で共に働き、下支えを続ける職人を支援したいという思いから、2019年8月にFIRSTを創業した。現在は、建設キャリアアップシステム(CCUS)を含めた各種ITサービス導入・運用のサポートや、建設管理業務の事務代行などを手掛けるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業の他、CCUSにAPI連携した就業履歴記録システム「1ーTouch(ワンタッチ)」の企画・開発などを進めている。

特にCCUSの代行申請数は累計で約4300件を超え、今では1ヵ月に500件ほど取り扱えるようになった。社内では豊田社長が関与しなくても運営できる組織体制を構築している。豊田社長は「『CCUSの代行申請=FIRST』という認知はされてきたが、『CCUS=FIRST』という規模で想定すると課題は山積みという状況になる。FIRSTの使命は、「最前線で作業する方々が本来のコア業務に集中できる環境を整え、現場の職人をヒーローとして確立させること」。CCUSの浸透が徐々にだが始まった今だからこそ、「独自の手法で現場の負荷を減少していきたい」と強い信念を見せる。

最近では、あいおいニッセイ同和損保保険(東京都渋谷区)やシビルウェブ(福岡県久留米市)とCCUSの普及に向けた取り組みを開始し、1日でも早い建設業界での定着を目指している。CCUSの登録代行を依頼した企業は、運用面など他分野の代行も希望する可能性が高まる。このような循環の先には、「BPO部門を押さえることができたDX企業が、その後の事業展開を優位に進められる」という構図が待ち受けていそうだ。

現在、組織拡大・人員増加を図っているFIRSTだが、豊田社長は「これまで男性中心だった建設業界を女性の力で変革し、女性が活躍する場の形成と地位向上を目指したい」と自身の目標を話す。理由は、「これまで何らかの制約で働くことを断念していた女性には、業界に色濃く残る独自のイメージを払拭できるエネルギーがあると信じているから」というシンプルな考え。既にテレワークも導入しており、引き続き積極的な採用を進めていくという。実の兄が社長を務める古巣の正和工業からのサポートもあり、就業履歴記録システム「1ーTouch(ワンタッチ)」の正式リリースも近々の予定だ。「今後もデジタルと人々の力によって建設業界を魅力的なものに変革していきたい。建設現場の働き方改革に貢献することで、次世代の担い手が多く出現するよう、あらゆる模索を繰り返していく」。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。