設立30周年に向け、新たな挑戦をスタート 福一興業
更新日:2025/9/19
今年4月に福一興業(東京都江東区)が、ノアテック(東京都中央区)を完全子会社化した。福山俊大社長は、「社会インフラ整備に伴う副産物処理や再資源化は、建設業界全体が直面する重要な課題。昨年は六価クロム規制が強化され、26年にはPFAS規制も控えている。こうした時代の流れを先取りし、安全で持続可能な未来づくりに挑みたい」と決意を述べる。「ノアテックが持つ有害物質処理の技術と、当社の安定基盤を融合させることで、規制強化の時代に対応する相乗効果を狙っていく」と先を見据える。

同社は、これまで水道・建材関連事業を主軸に事業を展開してきたが、次なる成長の柱として環境事業を重視する方針を固めた。今回の子会社化を機に、土壌地盤改良工事などでの連携を拡大し、環境負荷の低減を目論む。ノアテックが培ってきた有害物質処理やマイクロバイオーム分野の知見を活かし、環境領域だけでなく人・ペットの健康分野に新たな価値の提供も想定しているという。

昨年12月に社長に就任した福山社長は、ベンチャー企業での実務を経験後、家業への転身した経緯を持つ。過去の所属企業では、中小企業の廃業も多く目の当たりにし、事業を継続させていく難しさを痛感。先行きの不透明な状況が続く中でも、全く動じる様子を見せず事業を継続する家業に対する思いを強め、未経験ながらも現場監督の教えを忠実に守り、知見の蓄積に注力した。「建設業の魅力は、全ての仕事が人々の暮らしに直結すること。工事期間中には様々な制約を要するが、水道や道路などのライフライン整備は、その先には安全で豊かな社会を築くことができる」と醍醐味を語る。昨冬の能登半島地震では、社員が現地に出向き、復興作業に参画。その際、入社2年目の社員が、現地で直接感謝の言葉を受け感激した事例を挙げ、「このような体験を若手に提供し続けられるよう、日々の技術研鑽・創意工夫を心掛けようと改めて認識した」と実感を込める。

福一興業は来年12月に設立30周年を迎える。節目となる年を前に、「2026年を単なる通過点とはせず、新たな挑戦の契機としたい」と新たな意気込みを見せる。直近で為すべきことは、「人材の採用と育成に全力を尽くし、組織をより強固なものこと」。実現には、果敢な挑戦を恐れない確固たるスタンスと、変化を受け入れる柔軟さの双方が必要になるが、「目標である売り上げ30億円を達成するため、あらゆる手段を尽くしていきたい」と明確な意向を示す。「未来へより良い地球環境を届けること」と会社の理念を語るその眼差しには一点の曇りもない。今回の動きを追い風に、福一興業は更なる飛躍を遂げていくはずだ。

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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。