橋本組が「橋本ブランドの確立」に向けた取り組みに着手
更新日:2025/4/30
橋本組(静岡県焼津市)が、2025年に開催する日本国際博覧会(大阪・関西万博)・ハンガリーパビリオンの建設工事を、綜企画設計(東京都中央区)・Bayer Construct Zrt(ハンガリー)と共同で受注した。橋本真典社長は「未知の領域への挑戦だったが、『日本のために働く』という貴重な機会となった」と述懐する。工事の進行上、厳しい工期に直面したが、DXや斬新な工法の駆使により、工程を2週間ほど短縮できたようだ。


今回の着手において、橋本社長は「グループ会社からも社員を投入することで、多くの関係者が積極的な経験を積めることを意識した」と経緯を話す。特にハンガリー側との共同作業は初めての経験であり、施工図を一切活用しない、設計図のみを基に施工に臨む文化の壁に戸惑う社員も多かった。しかし、ほどなく「日本の建設業の常識は、世界の非常識」と受け入れ、短期間でも軌道修正を繰り返し業務に邁進する様子を、橋本社長は「頼もしく、また誇らしく思う」と感慨深そうに振り返る。時間外労働・上限規制の厳守が絶対条件という制約下の中、異国の政府・企業と1つの目標に向かって突き進んでいく業務。完工までの期間、関わる社員が蓄積できる知識・経験は計り知れない。



橋本社長は現在、「企業としてのガバナンス体制の整備を急いでいる」と心境を述べる。詰めるべき内容は、働く上での意識付けから社内のルール化、運用、それがモニタリングできているかのチェックなど多岐に渡る。これまでも「迷ったら実行する」との信念を基にPDCAサイクルを回してきた。しかし、これまで実施してきたつもりであった「『何の為に働くのか?』という生き方の原点にまで踏み込み、「生き方の拠り所となるバックボーンを作らなければならない」と本音を語る。一昨年には、会社は創業100周年を迎えた。今後も更なる発展を目指すために「今を転換期にするべき」と判断した、橋本社長の胆力がどのような形で実を結ぶか興味が尽きない。


橋本組では、「橋本グループとして2033年までに売り上げ1000億円の達成」を目標に掲げている。橋本社長に理由を聞くと、「社員の給与平均を1000万円に引き上げたいから」と即答する。実現には、1人当たり1億円の完工高を積み上げる必要があり、決して容易なことではないが、「理論的には、技術者1000人を確保すれば達成できるはず」と見立てる。「建設業の成果物は、同じ物は2つと存在しない全てがカスタマイズされたもの」と魅力を話す姿が印象的である。大阪・関西万博の開幕後、社員が家族に「あのハンガリーパビリオンは、お父さん・お母さんの会社が作ったんだよ」と伝え、子供が建設業に興味を持ち橋本組に入社するきっかけになれば、これほど嬉しいことはない。橋本社長の夢は「親子3代で橋本組」という社員が増えることであり、具現化への挑戦は既に始まっている。「橋本ブランドを確立させたい」。たった一言で説明できる、この行間から学べる要素は限りなく多いはずだ。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。