存在感でも1番を目指す。日和建設が始める新たな取り組み
更新日:2025/5/2
日和建設(大阪府八尾市)は昨年、民間工事の受注比率を大幅に引き上げる方針を決めた。現在、同社が手掛ける公共工事の割合は、全体の約9割。山下共子社長は「徐々にではあるが、8割程度に達するまで民間工事を増やしたい」と表明しており、昨年に発足した不動産部門の直販体制が、どのような形で目標達成に貢献するか注目である。

山下社長がパート社員として日和建設に入社した時期が1998年。入社直後から猛烈に働き、圧倒的な実績を残したことが評価され、数ヶ月後には正社員に昇格。その8年後には、社長に就任するという特異な経歴を持っている。就任直後に開始した取り組みは、社員が段階的に成長できる研修環境を作ること。構想から開始まで時間を要したが、MG研修やSTR(帝王学)、ほめ達検定など、独自の理論に基づいたカリキュラムで育成できるプログラムを構築し、宿泊可能な施設を整備したことも好評となっている。山下社長が「とにかく重きを置くべき点は『人』。当社を選んでくれた社員から『日和建設に入って良かった!』と感じて貰えるよう、社内体制は常に改善を繰り返している」と話す通り、継続的な業務改革を実施しており、10年近く前から残業ゼロと有給消化の徹底を指示。建設業界に迫り来る「2024年問題」に対しても、「当社では、以前より働き方改革を行ってきたので、今から特に新しいことを始める予定はない」と自信を持つ。建設業界内では、数少ない女性社長であった現実に苦悩したことも多かったが、「健全なる経営をやり続け、実績を積み重ねる」ことに集中した結果、社内にはスキルやノウハウだけでなく、人間力も育める環境を整えることができた。


今年2月1日には、マイホム(東京都港区)が提案するプロジェクト「PlusMe(プラスミー)」に参画を表明。「住宅×IT」の可能性を探求し、顧客がデザイン・プラン・スタイリングを選べること。また、290センチという高い天井でも災害に強い構造を完備できるコンセプトなどに共鳴し、新たな分野に進出を開始。山下社長も「公共土木が強いという当社のイメージを、少しでも変えていくきっかけになれば」と、既に民間建築やコンサルティング領域への挑戦も始めており、会社がどのような形で変化を遂げていくか興味深いところだ。

「当面は、八尾市内で当社が『売り上げだけでなく、存在感でも1番』と評価されることを目標に事業を展開していく。元旦に発生した能登半島地震で再確認されたように、万が一の天変地異が起こった際、現場から必要とされるのが建設業。今後も地域貢献と環境配慮を至上命題に、社員の幸福度も追求していけるよう、会社の舵取りを担っていきたい」と展望を語った。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。