社員の満足を最優先事項に。 細田組が見出す新展開
更新日:2025/4/25
「社員が『細田組に入って良かった』と実感できる会社に変えてみせる」。
1995年1月の入社以降、細田組(東京都江戸川区)の細田正隆社長は、この1点を集中的に考えながら会社の舵取りを担ってきた。父親に反発して実家を飛び出し、鳶職に就いたのが16歳の時。ゼロ始めた現場作業を寝る間も惜しんで積み重ねたことで、「技術と経験を蓄積し、現在の礎を築くことができた」と振り返る。その後、折り合いの悪かった父親との関係も修復し、「会社で使って下さい」と頭を下げたことで参画が決定。細田組の『社長と社員』という新たな関係性を開始することができたようだ。

常務を務めていた30代の頃には、それまで会社を取り仕切っていた複数の経営陣を、父の了承の上で解雇する役割も体験。この現実に直面したことで細田社長は「これは、古い企業体質から脱却を図るチャンス」と社内改革を決断。「売り上げを減らしてでも、全員で働いて利益を出せる会社に変えよう!」という掛け声の下、長年放置されてきた不明確な金銭の流れも整理したことで、「長く生き残る組織構築に向けた新陳代謝を実施できた」と顕著な変化を語る。工事では利益率を重視するため、依頼案件に対して、社長が直々に断りに出向くシーンも増えた。「期待された上での依頼を遠慮することは心苦しいが、当社で働く社員に更なる還元をするためには、致し方ないと涙を飲んで断りを入れている」と経営者としての苦悩と本音を述べる。「社員が幸せに働ける会社」。極めて真っ当かつ明快な動機の背景には、複数の苦渋な決断と確固たる信念が同居していることが理解できるエピソードである。


社内では、担い手確保のため、採用活動に多大な労力を割いており、最近では職場環境の刷新を考慮したDX導入も促進する。世代交代も視野に入れてはいるが、すぐに技術を身に付けられるものではなく、一筋縄でないかない暗中模索の現況も存在する。昨年には、21歳の長男が入社した。筆者が「4代目の社長を見据えてのこと?」と聞くと、「息子には30歳まで従事し、その重責を耐えられるか否かを決めてほしいと伝えている」と即答。「社長は優しいだけではダメ。従来のやり方が通用しないケースも多く、突破口を見出すことが困難だからこそ、考え続ける行為を止めないでほしい」と期待を寄せる。「もちろん、お客さまも大事だ。ただ、まずは社員を満足させることが優先事項」という細田社長の経営方針が、どのような形で引き継がれていくのか。継続的に利益を生み出せる体制を構築した細田組の次なる展開に期待したい。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。