コニックスが工事の協力体制を強化へ
更新日:2025/5/2

ビル・施設のメンテナンス・管理を手掛けるコニックス(名古屋市中村区)が、工事の協力会社体制を強化する方針を発表した。これまで順調に運用されていた仕組みに、新たな選択肢が加わることになる。吉田治伸社長は、「元々、ビルの清掃を中心に始まった当社の事業だったが、お客さまからの信用を積み重ねることで、徐々に工事分野が成長した経緯がある。当面は、電気や空調、設備などを意識して、信頼できるパートナー探しに注力したい」と戦略を話す。

吉田社長は、新卒で中京テレビに入り、技術や営業の経験を積んだ後、35歳で義理の父が社長を務めていた「コニックス」に入社した。当初から、「お客さまや社員が喜ぶことを最優先に考えて動けば、時代が変化しても経営は安定する」という信念の基、仕事に取り組み続けたが、「前例踏襲」を価値観の軸とするベテラン社員からは、煙たがられるようになっていた。しかし、低迷する支店の支店長に就任後も、変わらずそのスタンスを堅持。他部門に比べ大幅な業績アップを勝ち取り、方向性が間違っていなかった証明ができ、「ようやく社内の改革に取り掛かれるようになった」と当時を振り返る。その後、会社は無借金の状態で安定した基盤を築き、今期の売り上げは100憶円に迫る勢いに到達。吉田社長は、「少し余力のある現状だからこそ、より良いサービスを提供できる組織を構築すべきと、今回の決断に至った。特に電気・空調・設備などの工事は、本業のビルメンテナンスにおいても必須な項目。当社は、盤石な施工体制を確保しているので、協力会社の正確かつ高度な技術提案により、更なる可能性を拡張していきたい」と展望を述べる。コニックスでは、様々な分野の多くの引き合いはあるが、需要に対して供給が追い付いていない現実がある。今回の体制強化を上手く活かし、絶妙なステップアップが果たせるのか。吉田社長が、どのようなバランス感覚で組織運営を実施するか見物である。



吉田社長は、「協力会社体制を強化する他、ITを活用した省人化の実施などもすべきと頭にはあるが、今求められている仕事を維持することを優先的に進めていきたい。これまで属人的な要素で事業を継続できていた部分は多い。この長所を捨てることなく、新たな可能性を追求していきたい」と見立てを語る。昨年には、長く楽天(東京都世田谷区)に勤めていた娘婿も入社し、アプリ開発・導入などの取り組みも始めた。コニックスは創業68年目にして、初めて新旧を織り交ぜたハイブリッドな事業展開に挑む準備に入ったと言える。「今後も総合ビル管理会社として、省エネ・長期営繕計画などにも貪欲に取り組むことで、移り行く時代の変化に柔軟な対応をしていきたい。多様な時代に突入したと言われて久しいが、仕事は常に『人と人とのコミュニケーション』によって生まれるもの。克服すべき点は多いが、2700人の社員と共に、この難局を乗り越えていきたい」。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。