若者が憧れるDX企業のコプロス。ケコム工法で更なる浸透を目指す
更新日:2025/4/29
昨年、コプロス(山口県下関市)の宮﨑隆司氏が、専務取締役に就任した。宮﨑専務は将来、コプロスに戻ることを前提に、新卒で経営コンサルティング会社に勤務。「30歳になるまで、猛烈に働いて経験を積む」と自身に課した通り、20社近くの建設業を含めた数多くの中小企業の経営者と真摯に向き合い、各社の課題を解決してきた。企業のヒアリングを進めると、共通で抱える悩みが「事業」と「技術」の承継であり、若い人を雇用できない点だと察知。「コプロスには優秀な技術者はいる。私は、経営面のサポートで貢献できるよう準備する」と誰よりも働き、文字通り圧倒的な体験を積み重ねてきた。
満を持してコプロスに入社したのが2013年。入社直後は「社内が個人事業主の集まりのようで、組織としてどのようにまとめるべきか悩ましい」と感じた。しかし、真っ先に社員の携帯をガラケーからiPhoneに変えた他、日報の電子化やチャットシステムの導入、共有可能な情報は、社員がクラウド上でどこからでも確認できる環境などを整備した。開始当初は、年長者が戸惑う姿も見受けられたが、「すぐに社員同士が部署間を超えた意思疎通を行い、スムーズな連携を見せ始めた」とコミュニケーションの見える化を図った効果を語る。後日談として職長の1人が「実はFAXで日報を送信していた頃は、会社への帰属意識が薄かったと今になって気付いた」と吐露するように、事務作業のIT化を進めたことで、会社の結束を強める実績を作ることができた。宮﨑専務は、この成功事例を一昨年に買収後、自身が社長を務める清水組(山口県下関市)でも採用し、現場の業務効率化を推進しているという。
現在は、鋼製ケーシングを地中に圧入し、内部の土砂を掘削することで立坑を構築する「ケコム工法」と、非住宅の木造建築分野の普及促進に注力する。工程の全てが専用機械施工になること、また立抗内での人力作業が不要で環境負荷も少ない特徴もあり、ケコム工法は北海道以外の全ての都道府県で導入している。この現実に対して宮﨑専務は「まだ導入先は首都圏が中心と偏りがある。当社では、これを伸びしろと捉え、引き続きゼネコン・コンサルとの接触回数を増やし、何かあればお声掛けを頂く関係性を保っていきたい」と思いを語る。非住宅の木造建築でも、優れた空間活用と耐震性能を発揮するSE構法を駆使しており、ケコム工法と同様に浸透を目指す毎日だ。
長い期間、コプロスでも若手採用・育成に苦悩してきたが、宮﨑専務の入社以降は、SNSで積極的な発信・露出を続けてきた効果もあり、近年では毎年10人近くの新卒採用を実現。2022年5月の就職情報サイト「マイナビ」のPV数ランキングでは、中国地方と山口県内の双方で第1位を獲得するなど、「若者が憧れるDXを駆使する建設企業」という評価も定着し始めている。会社が銘打つ「再生可能エネルギー・インフラ×IT・地方創生へと事業の枠を超えていく」というフレーズが、多くの若者の共鳴・共感を呼んでいるようだ。
「今後は、全ての業務においてダブルキャストを徹底し、属人化の要素を極力減らすよう組織編成を進めていく。実際に当社の事業承継も現実的な視野に入り始めている。誰が不在でも補完し合えるシステムを構築し、更なる成長を会社一体となって目指しいきたい」と展望を述べた。偶然にも取材中、一級土木施工管理技士の資格を取得したばかりの若手社員が、「2人目の子供が生まれたので、育休を取りたいのですが~」と許可を取りに来るという象徴的なシーンに立ち合うことができた。有言実行・勇猛果敢を体現したような宮﨑専務が屋台骨となっているコプロス。これまでにない新しい波が下関から巻き起こりそうだ。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。