大協造園緑化が若手を軸にした組織運営をスタート
更新日:2025/4/29
大協造園緑化(静岡県浜松市)は、7月6日に設立50周年を迎える。内田大介社長が前職の公務員を辞め、同社に参画したのが10数年前。父親の急逝により、突如渡された社長というバトンに戸惑いはあった。しかし、経営が行き詰まりを始めたことを受け、創業者から会社を畳もうかと相談された父が、悩み抜いた上で引き継いだ会社だったこと。また、これから入社する若手社員と共に、造園業界を盛り上げたいという一心で社長就任を引き受けた経緯がある。

内田社長は、庭師の仕事を「美しい景観を作り出すだけでなく、交通安全や防災・環境保全など、樹木が持つ様々な機能を活かすクリエイティブな仕事」と断言する。「より良い街づくりを進めるには緑の管理が不可欠。実際に手掛けた仕事の結果が目に見えて分かることが長所」と造園業の醍醐味を語る。入社時に父から「俺たちの仕事はエコだ」とは聞いていた。頭では理解していたつもりだったが、「会社を率いて業界全体を俯瞰できるようになり、この言葉が真理を突いた金言だったと、ようやく腹落ちできた」と現況を語る。早期から「組織活性化には若手社員が必須」と採用強化も実施しており、近年では積極的なSNS運用にも着手。全ては「将来を担う有望な若手社員を迎え入れること」を徹底した姿勢は既に良い兆候を生み出しており、今後の変遷が興味深い。


現在は、ベテラン社員の熟練した技術を、どのような過程を踏めばスムーズに継承できるかを模索。長い期間をかけて習得する街路樹剪定士としての技術は、一朝一夕で身に付けられるものではない。しかし、企業の永続を見据えると、若手にはなるべく早く活躍できるステージに辿り着いてほしい。常に経営者としての葛藤は抱えながらも、「最優先事項は、今できることに最善を尽くすこと」と覚悟を決める姿は印象的だ。最近では、若手からベテランに話し掛け、ノウハウを吸収しようとする姿勢が全面に出るなどの変化出ており、内田社長も「これを続けていくことが正解」と捉えているようだ。


内田社長は、「当社では、社員のプライベートが充実するよう、時間内に仕事を終わらせることを徹底している」と独自のスタイルを話す。業務上で必要な資格が生じた場合は、会社が取得に向けた費用を負担するなど、サポート体制も日々向上させている。このような施策を現場の状況に合わせ、微修正し続けられている点が若手定着の秘訣のようだ。環境問題が大きな関心を呼び、街路樹の重要性が増す中、「社員あっての会社」を体現する大協造園緑化。組織運営において、余力のある段階から若手の採用・育成に全力を尽くすスタンスは、会社の継続的な成長に繋がっていくはずだ。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。