クラフトバンク総研

教育体制を強化したイオスが、社員幸福度の追求に着手

更新日:2025/4/28

解体工事を手掛けるイオス(福岡県飯塚市)は現在、社員教育体制の強化を進めている。多賀谷兵馬社長は、「今まで社員のモラルや士気の向上などに課題を感じながらも、忙しさを理由に何の対策もできない現実に直面していた。この状況を打破するため、ゼロから制度の構築を手掛けた」と立ち上げからの経緯を語る。

ルール作りのために実施した具体策として、自身の夢も書き込む自己評価シートの作成や行動指標の策定など、独自の施策を挙げる。達成すべきポイントを言語化したことで、社員からは「目指すべき像がクリアになった」と声が上がるなど、以前とは顕著な違いを生み出すことができたという。新たな教育体制が浸透した理由を多賀谷社長は、「社長である私が社員それぞれと講話する時間を設けられたこと」と見立てる。会社としての経営原則や課題を直接語り掛けることで、社員には本質がスムーズに腹落ちし、次の行動も想定する余力を作り出すことに成功。これは今年3月に創設した、「月間・年間MVP制度」にも繋がっており、定期的に社長が社員を特有の視点からも「見ていて、評価もする」と理解させることで、常に当事者意識を持つことができたようだ。

イオスは経営理念に「仕事で関わる全ての人を笑顔にする」を掲げる。解体業は生活において必要不可欠な仕事にも関わらず、心身共にハードな面が多いため取り組みたいと考える人が圧倒的に少ない。しかし、多賀谷社長は「入職すればすぐに理解できるが、解体業は全く同じ作業のない魅力的な仕事」と断言する。同じと思われがちな作業の全ては、現場ごとに立地条件やスケジュールが異なり、工夫と段取り次第では早期に業務を終えることもできる。「業界全体が3Kと言われて久しいが、この現状を受け入れた上で、マンネリ脱却を心掛けることが『職人はカッコ良い!』に直結する」と独自の考えを示す。実際にイオスが携わる現場では、社員だけでなく顧客までも「いつもありがとうね!」などポジティブな声が交わされている。多賀谷兵馬社長は、「まだ改善点は多いが~」と謙遜するが、教育体制を強化した後のイオスからは、今までにない勢いが溢れていることが分かる。

 

多賀谷社長は、今後の目標を「社員幸福度の追求」と即答する。「売り上げを考え過ぎて、仕事に追われた社員が不幸になっては意味がない。社内体制が構築されつつある今、まずは社員各々の夢を叶えることを最優先に取り掛かりたい」と展望を語る。この良いスパイラルが継続できれば、自ずと売り上げ・利益も上がる算段もあるように見受けられる。今期中に評価指標の確立を目指すイオスが、社内を盤石化できた頃には、会社は次のステージを迎える準備が整っているはずだ。

新着記事

  • 2025.05.30

    久志本組が200年企業に向けた取り組みをスタート

     久志本組(三重県四日市市)の清水良保社長は、日頃から社員に「地域の方から頼られた時に『嬉しい』と素朴に感じられる人であってほしい」と伝えている。会社は、創業から120年以上の歴史を四日市市に刻み続けてきた。シンプルでオ […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2025.05.27

    ショールーム開設のハマニ。左官技術の伝承に全力を尽くす

    「とにかく職人の採用・育成の改革が急務だと感じた」。  左官・土木工事を手掛けるハマニ(静岡県浜松市)の河合滋社長は、慣習として続けてきた「見て学ぶ」「技術を盗んで覚える」という従来の職人文化に限界を感じ、体制の移行を決 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.05.23

    「誰かの笑顔のために」、三瓶工業がDX駆使で新たなステージへ

     ㈱三瓶工業(山形県天童市)は2022年、設立50周年を記念して会社のロゴや制服、ヘルメットなどのデザインを刷新した。アイデア作りからデザイン製作までを一括で依頼した先は東北芸術工科大学。地元の芸大生との連携により、これ […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.05.14

    事前防災の定着に最善を尽くす 目黒建設業防災連合会

     目黒建設業防災連合会は2021年5月に発足し、初代会長には加藤公章氏(加藤電気工事)が就任した。同連合会は、目黒区内の建設・電気・設備・造園の4団体から構成されており、加藤会長は「地元の建設業が何をすべきかを突き詰めた […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子