工務店が住宅を作り続けられる環境を作る。グラウンド・ワークスが環境に配慮した取り組みを継続
更新日:2025/5/2

グラウンド・ワークス(静岡県袋井市)の山下英俊社長は、1度は父親が創業した工務店で「自分の力で実家を盛り立てる」と、営業や現場監督などに従事した。しかし、ローコスト住宅の蔓延や、合理化工法の普及が難しい状況、家づくりを支える職人、実家である工務店との関係性などに歪みが生じ、仕事の取り組みに悩んだ末に退職。自らの無知無能さ故に周囲を悲しませたと、建築をゼロから学び直すことを決意した。基礎工・鉄筋工など様々な現場で経験を積み、2級建築士の資格を取得すると、「工務店出身の自分だからこそ、工務店や設計事務所を影でサポートしてみせる」と覚悟を決め、「グラウンド・ワークス」を創業した。会社は今年で16期目を迎え、静岡県・愛知県を中心に地盤調査・工事やシロアリ対策、断熱施工、気密測定などを手掛けている。


創業から一貫している経営スタイルは、「地域工務店・施主にとって、『見えない部分』の安心を提供すること」。住環境の中でも、土・壁の中や床下、天井裏などの安全を担っており、現在は800社以上の工務店・設計事務所を下支えする存在として定着している。地盤改良工事では、砕石した天然素材だけを利用して軟弱地盤を改良する「HySPEED工法」を採択。セメントなどの固結材を一切使わないため、特定有害物質を発生させず、資産価値を下げない環境に配慮した施工を実現している。HySPEED工法を含め、取り扱う全ての分野で環境を考慮する理由は、当初から「今後、確実に顧客のリテラシーが上がり、あらゆる部門でフェイクが通用しない時代が到来すると確信していたから」。施工する社員の健康面からも自然素材は大切と考えている。

主力事業である地盤・断熱・シロアリの他、住宅医のポジションを目指す『住宅MRI』と称し、住宅性能に必要不可欠な気密・換気風量測定や、サーモカメラを活用した温熱環境チェックなどを推進した、住宅性能の可視化にも取り組む。「環境基準に課題は感じているが、どのように対処すべきか分からない企業はまだ多く、このギャップこそ当社でしか埋められないと明確化できた」と今までの経緯を話す。最近では、サッシや防水シート、断熱材までを一体化している地域材大型パネルを用いる需要も増加しており、現場の工期短縮や職人の省力化に貢献しているという。木材には、地元の天竜杉を使用するなど、地場産業の活性化にも一役買っており、グラウンド・ワークスが上棟まで請け負うサービスも好評である。


現在、工務店が請け負った過去の顧客(OB)に対しては、3年間・無料でハウスクリーニングなどのリペア対応できるパッケージも検討しているという。山下社長は「私の目標は、工務店が住宅を作り続けられる環境を作ること。現場で作業する人が『コスト』でなく、『コストパフォーマンス』で評価されるシステムを構築できるよう、今後も新たなアイデアを具現化し、継続的なサポートをしていきたい」と見通しを話す。

山下社長は、三島営業所の開設と同時に、静岡エフエム放送(浜松市中区)で、ラジオ番組「K-MIX ビルダーズ・ラジオ」のパーソナリティーを担当し、様々な建設関係者をゲストに迎え、業界の課題や展望などを聞いている。「当番組を引き受ける大きなきっかけは、『静岡から建設業を盛り上げていきたい』という強い思いから。地場に根差した企業で活躍する経営者に色んな角度から触れ合うことで、私自身も学びを得ることが多い。産業全体から見ると微力になるが、志ある建設業に携わる方と今後も様々な形で連携できるよう精力的な活動を続けていく」。
HySPEED工法について= https://www.ground-works.biz/works/improvement
気密測定について= https://www.ground-works.biz/works/mri
ブローイング断熱工法について= https://www.ground-works.biz/works/blow
地域材大型パネルについて= https://www.ground-works.biz/works/panel
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。