クラフトバンク総研

東広島建設業協会が一致団結した活動で地域を守

更新日:2025/4/28

東広島建設業協会の上垣健会長(上垣組・代表取締役)は、昨年9月に広島県が導入した低入札価格調査制度「変動型調査基準価格」に対し、「『担い手3法』に逆行する行為」と指摘する。昨今では、労務費も上がり始めたが、それ以上に材料費も上昇の一途を辿っている。材料費が上がるのに対し、それを物価調査会が調べ、価格改定が反映されるのは約1年後。この間に血を流すのは企業であり、現状ではこの状況下で公共工事の調査基準価格が従来の90%から下限を82%に引き下げられ、下限値に近い入札が頻発している。

上垣健会長は「当たり前だが公共工事では、適正な利益を確保できる仕組みを確立できていないと、事業継続は不可能になる」と普遍的な事実を話す。是正に必要な事項を聞くと「入札率を国の基準で積算した状態に近づけること」と断言。今年7月には一部の見直しが行われたが、「現場は日に日に切迫した状況が続いており、現状のままでは公共工事と呼べるものではなくなる可能性が高い」と苦言を呈す。建設従事者にとっての重要事項は、「付加価値のある高品質な成果物を提供し続け得ること」。民間企業と官公庁での絶妙なバランスは求められるが、近々にでも最低限の調和を取る必要がある。

東広島建設業協会では、2018年に発生した西日本豪雨災害の際、チャリティーゴルフを3回開催し、総額500万円以上の金額を東広島市に寄付した。一昔前の何となく悪いイメージから脱却を図り、「復旧・復興に対する思い」を形にした。協会では、東広島市と大規模災害協定を結んでから3年が経過した。上垣会長は「可能であれば、県と市、消防、自衛隊とも合同でミーティングを実施し、当協会としては『災害発生直後、初動でどのように動くか』をテーマに重点的な議論がしたい」と本音を述べる。人命救助のタイムリミットと言われる「72時間の壁」を重視した発言であり、日頃から万が一に備えた事前準備に余念がないことが理解できる。

上垣健会長は、「協会の会員同士は、お互いライバルではあるが、一致団結して県・市の安全・安心を最優先に考える集団だということは間違いない」と言い切る。各社の社会貢献に対する意識は高く、現状を強化した状態の維持が、「更なる地域貢献に繋がっていく」と見立てを話す。当面は、公共工事だけでなく都市計画や宅地造成、企業誘致などの積極化を予定しており、東広島市特有の優位性を示すことで、「10~20年先を目論んだ施策も打ち出していきたい」と意気込みを語る。加盟する広島県建設業協会連合会全国中小建設業協会とも、深い連携が取れている。時代のニーズを察知し、市民に愛された団体を目指す東広島建設業協会は、今日も唯一無二の活動を心掛けている。

新着記事

  • 2025.06.04

    技術継承の橋渡し役を担う 日本多能工協会

     2023年8月4日に日本多能工協会が設立された。代表理事を務める人物は、結城伸太郎氏(ゆうき総業・代表取締役)。20歳の時に刷毛一本で独立し、職人不足の中でも若手育成に励み、地道な活動を経て現在地に辿り着いた経緯がある […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.05.30

    久志本組が200年企業に向けた取り組みをスタート

     久志本組(三重県四日市市)の清水良保社長は、日頃から社員に「地域の方から頼られた時に『嬉しい』と素朴に感じられる人であってほしい」と伝えている。会社は、創業から120年以上の歴史を四日市市に刻み続けてきた。シンプルでオ […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2025.05.27

    ショールーム開設のハマニ。左官技術の伝承に全力を尽くす

    「とにかく職人の採用・育成の改革が急務だと感じた」。  左官・土木工事を手掛けるハマニ(静岡県浜松市)の河合滋社長は、慣習として続けてきた「見て学ぶ」「技術を盗んで覚える」という従来の職人文化に限界を感じ、体制の移行を決 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.05.23

    「誰かの笑顔のために」、三瓶工業がDX駆使で新たなステージへ

     ㈱三瓶工業(山形県天童市)は2022年、設立50周年を記念して会社のロゴや制服、ヘルメットなどのデザインを刷新した。アイデア作りからデザイン製作までを一括で依頼した先は東北芸術工科大学。地元の芸大生との連携により、これ […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦