DX完備のカケヒが打開策を提示
更新日:2025/4/28

総合建設会社のカケヒ(福井県坂出市)が、今年創業60周年を迎えた。同社は、「次世代に誇れる住みやすい街を目指す」をテーマに、建設工事を通した地域社会への貢献を目指しており、各地で巻き起こる天変地異に対しても迅速な活動で住民の生命・財産を守っている。

2016年に代表取締役社長に就任した筧智仁氏は、「幼い頃から家業を営む環境で生活してきた影響もあり、自然と建設業界に入職することを意識していた」と当時からの状況を振り返る。学生時代には、建設業での活動に活きると都市環境工学を専攻。カケヒに入社後は、現場監理などを中心に様々な経験を詰めたことで、「業界特有の奥深さを学ぶことができた」と感慨深そうに語る。現在は、福井県内の公共事業や災害復旧事業を主軸に、先代である実父の会長と二人三脚で、地域のインフラ整備などを担っている。


社長就任以降、力を入れた分野が自社のDX化の推進。筧社長は、「他社に先駆けてICT施工技術を導入したことで、手作業の削減や残業時間の抑制など、生産性が大幅に向上した」と功績を話す。特に設計データの迅速な駆使などにより、吸収の早い若手社員の飛躍は目を見張るものとなり、社員の有給取得率も急増。法定5日間の取得率が100%に限りなく近づくなど、現場の効率化が社員のプライベート充実化に繋がる好循環を生み出すことができたという。様々な困難に直面しても、常に筧社長自身は「なるようになる」と冷静な視点を持つ。今年9月に発生した石川県輪島市の豪雨災害の現場でも、ライフラインの復旧作業を着実に進めている。どんな時でも取り乱すことなく淡々と業務をこなす姿は、社員からの厚い信頼に直結しており、早期にデジタル化が促進できた要因とも考えられる。


筧社長は、「今後もDXの加速化を目指すことに変わりはない」と断言する。その理由は、社員にとって更に働きやすい環境を整えることは、社内外の良きサイクルを作り出すと熟知しているからであり、この流れを社員の賃金アップに活かそうと奮闘する。「当社のようなDX完備が、業界全体の給与上昇に反映することを夢見ている」と語る目には熱いものが見て取れる。基本賃金の引き上げについては国の支援も必要となるが、賃金水準が他業種と比較して低い点を考慮すると、貴重な打開策になる可能性は高い。先行きの不透明な過渡期を迎えているが、筧社長は「土木工事を通じて地域の皆様に便利で安全な暮らしを提供するスタンスは変わらない」と決意を語る。最新技術を取り入れることで、新たな突破口を見出す努力を止めないカケヒが、新たな道を開拓する日を期待したい。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。