川嶋建設が「200年企業への基盤づくり」に入る
更新日:2025/5/2

川嶋建設(兵庫県豊岡市)の川嶋祐紀社長は、2021年10月に会社としての長期ビジョンを設定した。掲げた内容は、「挑戦と成長を通して、但馬で最もやりがいのある企業を目指し、150年の基盤を創ること」。具体的な方針には、災害対策を始めとした地域との繋がりの他、社員満足度の向上、新技術・他分野の知識を積極的に吸収することを盛り込み、企業風土の醸成にまで踏み込んだ指針となっている。現在、創業136年目を迎える歴史ある企業の新たな挑戦が始まった。

川嶋社長は、新卒で準大手ゼネコンにて修行後、川嶋建設に入社した経歴を持つ。前社長の時代は、トップダウンの風土であるものの、安定した経営基盤のもとで順調に会社運営ができていた。しかし、「もし自分が社長だとしたら?」という仮定に立つと、「真似はできない」と悟る。「私自身が社長になった時は、目標は示すが道のりは自由にすることで、社員の主体性を活かすべきと考えるようになった」と振り返る。2022年11月の社長就任に向けて、大学院で経営学やマーケティングなどを学びMBAを取得した。在学中に交流を持った多くの同志たちからも大きな刺激を受け、「現在の経営方針に活かしている」と目を輝かせる姿が印象的である。


社長に就いて間もなくして、川嶋社長は社内DXの加速化を決意。特に3Dプリンターによる施工を但馬地区内で周囲に先駆けて導入した所、対象工事が近畿地方整備局の局長表彰を受賞した。新しい技術に加え、業務の円滑さや高い完成度が評価されてのことだった。川嶋社長は、「決して点数のために取り入れた訳ではない。だが、このような先鋭的な取り組みが評価を受けたことで、会社としてのベクトルの提示と若手社員のモチベーション向上にも繋がった」と感慨深そうに語る。発注者と特殊な技術を勉強する貴重な機会ともなり、技術の底上げに貢献できたことを「嬉しい驚きだった」と喜びを滲ませる。



現在は、創業150年に向けた体制を整えているが、川嶋社長は「200年企業への基盤づくりも怠らないように実施したい」と更なる先も見据える。最新機器の駆使や研修を含めた教育制度の充実化など、直近でも克服すべき課題も残っている。何より最優先事項として考えているのは、社員の満足度アップと働き甲斐のある職場の整備。社長自身が掲げる「建設業を人が集まる業界にする」という重大な目的に辿り着くまでの道のりは長そうだ。日頃から建設業の長所を「事業の大きさと公益性」と話す通り、「インフラ整備や災害対策など、事業が地域の生活に密接で、その果たす役割は大きい。今後も地域に根差しながらも大きな工事に挑戦し続けることで、但馬で最もやりがいのある企業にする」との決意は誰よりも固い。


座右の銘は、中国のことわざである「悦己悦人(えつみえつじん)」であり、「自分も喜び、他者も喜ぶことをする」との意味がある。川嶋建設の喜びが社長自身だけでなく、社員や地域、業界内外など、様々な場所に伝播していく日々を待つばかりだ。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。