海外進出も視野に、港南空調サービスが組織の活性化を目指す
更新日:2025/4/28

港南空調サービス(横浜市港南区)が、横浜を拠点に会社を設立してから30年以上が経過した。店舗・新築住宅・リフォームにおける空調設備なども行うが、作田徳光社長は「現在、会社としての業務の9割以上が、パナソニックから依頼を受けて手掛ける工事で構成されている」と語る。法人化当初は、仕事が多く舞い込む状況だったため、人員を増やし協力会社の手も借りながら、事業を展開していた。しかし、その内訳を分析すると、常に忙しいにも関わらず、手元に残る資金は減り続けていた状態だったため、「外注は使わず自社で職人を雇い工事を完結する体制に切り替えた」と転換期を語る。

作田社長は、「パナソニックで何か新しい工事が始まる時は、先方から真っ先に情報が入り、その情報を基にクレーム処理などの枠組みから協力することが多い。このような関係性は、長年蓄積してきた信頼関係に基づくものと実感している。経営者としては、パナソニックとの良好な関係を保ちつつ、引き続き他の店舗・新築住宅・リフォームにおける空調設備などにも目を配れるよう、その時々で判断しバランスも考慮した仕事の手配を心掛けたい」と本音を話す。作田社長は、工程の組み換えに関する判断などは、基本的に職長や現場に任せるスタイルを採用。朝は必ず社員と顔を合わせることで、日々の様子を把握しケアすることを心掛ける。「当社はアナログだから」と照れながら話すが、実際に対面でなければ読み取れない微妙なニュアンスが、想像以上に多いことが見て取れる。


「現在、克服すべき喫緊の課題は、とにかく『人材』の問題。人材の確保・育成が順調に進めば拠点を神奈川だけでなく、東京・千葉・埼玉などにも展開できる」と考える。その上で「当社には今、非常に優秀なベトナム出身の特定技能実習生がおり、彼が帰国するタイミングでベトナムに会社を創設することも視野に入れ始めた。国内外問わず、優秀な人材を積極的に雇用し、組織内の活性化を実現することで、『港南空調サービスで働けて良かった』と思える社員が1人でも増えるよう努力していく」と展望を語る。急速に変化し続ける時代の流れを考慮すると、「いずれは、自分のスタイルが通用しなくなる時が来るだろう」と実感を込めて話す。娘婿は既に港南空調サービスで働いており、事業承継について考える時間も増えてきたようだ。作田社長は、「向こう10年で責任や決定権を委譲しつつ、タイミングを図りながら、次の世代に技術や経験を伝承したい」と先を見据えている。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。