クラフトバンク総研

建築防水のプロ集団の興亜が、心の通った組織運営を継続

更新日:2025/4/28

「会社の方針を変えていくが、従えないなら辞めてほしい」

美容師として10年働いた後、妻の実家である家業を継ぎ、社長就任前に興亜(京都市南区)の滝川太郎社長が表明した意思である。他業種から入社し、ゼロから飛び込み営業や、現場管理などを経て滋賀支社長も務め、着実に経験を積み重ねてきた。自身より年長者かつベテランに対する進言となり躊躇はしたが、「今後の経営を考えると、きちんと線引きをする必要があった」と振り返る。古参の役員が去る中、営業部長を含め3人が残った状況を機に「文字通り、心機一転の再スタートを切った」と晴れやかな表情を見せる。

 

会社としては、大規模修繕に注力していく方針を掲げ、昨年4月には品質安全管理部を創設。「リスク管理は重要な業務。仕事を請け負うからには、責任を果たせるよう安全・品質・工程など、全てにおいて納得した形で業務に取り組みたかった」と意図を語る。地元の防水・屋根工事の専門業者として、会社を設立した時期が昭和29年。現在も防水工事においては、営業活動から施工・サポートまで「自社施工」にこだわる業務を進めている。時代の変遷もあり、過渡期にシフトする恐怖はあったが、これまで1つひとつの実績が信頼の証となり、新たな挑戦を始める決断をした。

 

社長に就任以降、社員の平均年齢も約40歳に若返りを見せるなど、会社として明るい兆しは多い。滝川社長も「これまで培ってきた経験を、次世代にどのような形で伝承していくのがベストかを考える時間も増えてきた」と本音を語る。社内には、人手不足・2024年問題の対応・原材料の高騰など、一朝一夕では解決できない課題は存在する。このような難局に対しても、「若手社員の意見も積極的に取り入れ、軌道修正を繰り返すことで乗り越えていきたい」と柔軟な姿勢を示す。理事長を務める関西防水管理事業協同組合でも、SDGsやカーボンニュートラルにおける社会的課題の解決を推進するなど、周囲のバランスに配慮しながらも、常に向上を目指し続けるスタンスが特徴である。

「当面は、防水専門業を軸にマンション改修を含めた大規模修繕工事を軌道に乗せバランスの良い経営を手掛けていく。当社は、工事で地元に貢献できる組織。引き続き、社会的課題に貢献できる体制を保ち、建築防水のプロ集団として、心の通った組織運営を継続していく」と固い意志を語った。

新着記事

  • 2025.09.05

    社員教育の重視で新たな勝負に挑む 武壱工業

    足場・鳶工事などに携わる武壱工業(山口県下関市)は、社員教育に重きを置く方針を発表した。伊藤武士社長が、スローガンに掲げたのは「日本の未来に貢献する人材育成」。これまで短期間での社員育成を試みたことはあった。しかし、今回 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.09.04

    「地域の守り手」としての存在感を高める 伊東建設業協同組合

    今年5月に開催した伊東建設業協同組合の総会にて、堀口組(静岡県伊東市)の堀口正敏社長が理事長に就任した。50年以上の歴史を持つ同組合は、若い世代がリーダーシップを発揮する土壌が脈々と受け継がれている。就任直後の挨拶で堀口 […]
    クラフトバンク総研記者松本雄一
  • 2025.09.02

    企業永続を見据えた組織化に本腰 姶良電設

    入社間もない頃、現場作業に従事している時は、順調に業績が伸びていると思い込んでいた。しかし、姶良電設(鹿児島県姶良市)の東鶴真児社長は「いざ決算書を見ると、初めて債務超過に陥っている現実を知った」と当時を振り返る。経営面 […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.08.29

    新たなステージを見据えた活動に注力 ナガタ

    ナガタ(秋田市)の永田勲社長は、「現状維持は衰退の始まり。従業員を守るためにも売り上げを確保し、どのような状況下でもステップアップできる姿勢を貫く」という明確なスタンスを打ち出している。木造住宅の解体や再生可能エネルギー […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇