アレンジ可能な本棚が突破口に。倉田裕之/建築・計画事務所が設計・デザインの両輪で躍進
更新日:2025/5/2

倉田裕之/建築・計画事務所(東京都品川区)の倉田裕之社長は、設計事務所勤務やイタリアへの建築留学などを経て、1987年に一級建築士事務所を開設。主に建築設計・監理に関する業務に携わり、翌年7月には法人化を実施した。当時はバブル真っ只中。土地を買い占めた不動産業者からは、あたかも発注するかのような素振りで「この土地に適切な事業計画と模型を作成してほしい」との依頼が数多く舞い込んできたという。納品後に音沙汰のなくなる業者もいた。しかし、「あの時期に無我夢中で業務を量産しながら実績を作れたことが、後の役に立った」と振り返る。時代の流れもあり、ワンルームマンションや2世帯住宅などを数多く設計し、さまざまな経験を積むことができた。


バブル景気に陰りが見え始めた90年代初頭、創業時から研究を続けてきたプロダクトデザイン分野の業務を本格的に始動。2001年には、自社のデザインする収納家具を販売するサイト「margherita(マルゲリータ)」を立ち上げ、インターネットを通して、自身が設計から製造まで手掛ける約800製品の販路を構築した。当初からインテリア・エクステリアプロダクトなどで手堅い成長を遂げていたが、10年目を迎えた時期にリリースした本棚が伸びていった。顧客からは「ニトリ、無印良品、イケアとは違い、こちらの要望を図面化しアレンジに対応して貰える」と高い評価を受けたことが、「当社の圧倒的な強みは、ここにあると自覚するに至った」と語る。

9月9日には、マルゲリータ東京ショールームをリニューアルオープンし、新たな船出を迎えることができた。現在も建築設計と家具デザインの両輪で事業を展開しており、「好きな設計の仕事を自由に選べ、適材適所の活動が取れるこのスタイルは性に合っている」と自信を見せている。

来年は会社設立35周年を迎え、徐々にではあるが自身が不在でも会社が継続するための組織編制にも視野を入れ始めている。社員も18人に増加し、自社ブランド価値の向上とチーム強化に励む毎日だ。「不透明な外的要因に左右されるケースが急増してきたが、このような状況だからこそ柔軟な発想と行動が大事だと考えている。建築・プロダクトのデザインソリューションを通じて、生活・企業価値の進展に貢献できるよう、今後もあらゆる模索を繰り返していく」。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。