テクノロジーを軸に現状打破へ。共立エンジニヤがDXを追求する理由
更新日:2025/4/28

建設コンサルタントの共立エンジニヤ(島根県松江市)は、Dynamoを活用した自動設計への取り組みを開始した。Dynamoとは、RevitやCivil 3DなどオートデスクのBIM関連ソフトを自動制御できるように開発された技術。マウスやキーボード操作で部材などを1つずつ入力してきた作業を、Dynamoを活用することで自動的に開発できるようになる。


技術管理部の和多田実部長は、「これまでは、設計技術者が2次元ベースでの検討・決定を下した後、オペレーターが2次元から3次元に変換する作業を行っていた。しかし、設計者自らが設計検討段階でDynamoを活用し、諸条件などの情報を入力することで、リアルタイムに検討結果を3次元モデルに反映すると、圧倒的な業務効率化に繋がる。今まで3次元ソフトを活用していない人でも、すぐに操作可能なため、社内外での浸透を進めていきたい」と語る。

廖鵬飛(リョウ・ペンフェイ)技師も「現在は、砂防堰堤設計でのダム軸の検討から、構造物規模の決定(堰堤高・堰堤長など)、3次元モデル作成のプロセスなどをリアルタイムで行えるよう努めている。この技術を活かすことで、設計協議の場では、発注者の意見を踏まえた計画変更も即座に対応できるようになり、協議プロセスを含めた全体の効率化が実現するはずだ。このような変化は、BIM/CIMにある特徴を更に発揮できるようになる」と見立てを話す。共立エンジニヤでは、実証実験も近々に始める予定であり、今後の成り行きに注目である。

和多田部長と廖氏が所属する技術管理部は、社内のDX化や生産性向上の実現を促進する部署であり、国土交通省が定める「i-Construction」の対応にもいち早く取り組みを開始。施工会社と連携することも増えたという。「現在も設計段階は、2次元で行うことが多い。しかし、この過渡期が過ぎれば、全てを3次元で実施することが主流になると考えている。特に若手社員は、最新技術に全く抵抗がなく、導入を開始してからは離職率が格段に下がるという現象も起きている。このような追い風も味方に、国や県、施工会社と共同でテクノロジーの有効活用を目指したい」と和多田氏は先を見据える。慢性的な人手不足が常態化する建設業界では、DXの推進が喫緊のテーマ。しかし、既成の慣習やルールの縛り、3次元の徹底には費用が掛かるなど課題も多い。廖氏も「BIM/CIMの本来の目的は『圧倒的な生産性向上の実現』という根幹を忘れることなく、行政とも中庸的なバランスを取りながら新技術の導入を進めていきたい」と期待を込める。共立エンジニヤは、「島根県のオンリーワンのクリエ-タ-になること」を目標にする企業。社員全員が「テクノロジーを通して、安全・安心で住みやすく快適な生活環境をつくること」を胸に、日々の業務に取り組めていることが大きな魅力である。

橋脚や港湾構造物などを水中点検する際、点検に特化した潜水士が少なく、1日に潜れる時間に制限もある現状を考慮し、「今後は、水中ドローンも精力的に活用し、遠隔で点検技術者自らが確認する環境を整備する」と和多田氏は意気込みを語る。既に島根県とも協議を開始しており、説明会を開いた結果、肯定的なリアクションが多かったという。スクリーニング調査段階では、目視は必須でなく遠隔からモニターを通じてでも問題ないと定説になりつつある。和多田氏は、「AIでの画像診断やロボットの投入など、これから特化していきたい分野はまだ多い。テクノロジーによる省人化は、業界全体の高齢化・働き手不足の解決には避けては通れない道。当社の業務が、現状打破につながるよう、引き続き精進していきたい」と展望を述べた。旧態依然とした労働環境が色濃く残る現状だが、共立エンジニヤが目指すような世界観が実現できるのか―。このポイントが、今後の建設業界の先行きを決定付けることは間違いない。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。