クラフトバンク総研

テクノロジーを軸に現状打破へ。共立エンジニヤがDXを追求する理由

更新日:2025/5/30

建設コンサルタントの共立エンジニヤ(島根県松江市)は、Dynamoを活用した自動設計への取り組みを開始した。Dynamoとは、RevitやCivil 3DなどオートデスクのBIM関連ソフトを自動制御できるように開発された技術。マウスやキーボード操作で部材などを1つずつ入力してきた作業を、Dynamoを活用することで自動的に開発できるようになる。

技術管理部の和多田実部長は、「これまでは、設計技術者が2次元ベースでの検討・決定を下した後、オペレーターが2次元から3次元に変換する作業を行っていた。しかし、設計者自らが設計検討段階でDynamoを活用し、諸条件などの情報を入力することで、リアルタイムに検討結果を3次元モデルに反映すると、圧倒的な業務効率化に繋がる。今まで3次元ソフトを活用していない人でも、すぐに操作可能なため、社内外での浸透を進めていきたい」と語る。

廖鵬飛(リョウ・ペンフェイ)技師も「現在は、砂防堰堤設計でのダム軸の検討から、構造物規模の決定(堰堤高・堰堤長など)、3次元モデル作成のプロセスなどをリアルタイムで行えるよう努めている。この技術を活かすことで、設計協議の場では、発注者の意見を踏まえた計画変更も即座に対応できるようになり、協議プロセスを含めた全体の効率化が実現するはずだ。このような変化は、BIM/CIMにある特徴を更に発揮できるようになる」と見立てを話す。共立エンジニヤでは、実証実験も近々に始める予定であり、今後の成り行きに注目である。

和多田部長と廖氏が所属する技術管理部は、社内のDX化や生産性向上の実現を促進する部署であり、国土交通省が定める「i-Construction」の対応にもいち早く取り組みを開始。施工会社と連携することも増えたという。「現在も設計段階は、2次元で行うことが多い。しかし、この過渡期が過ぎれば、全てを3次元で実施することが主流になると考えている。特に若手社員は、最新技術に全く抵抗がなく、導入を開始してからは離職率が格段に下がるという現象も起きている。このような追い風も味方に、国や県、施工会社と共同でテクノロジーの有効活用を目指したい」と和多田氏は先を見据える。慢性的な人手不足が常態化する建設業界では、DXの推進が喫緊のテーマ。しかし、既成の慣習やルールの縛り、3次元の徹底には費用が掛かるなど課題も多い。廖氏も「BIM/CIMの本来の目的は『圧倒的な生産性向上の実現』という根幹を忘れることなく、行政とも中庸的なバランスを取りながら新技術の導入を進めていきたい」と期待を込める。共立エンジニヤは、「島根県のオンリーワンのクリエ-タ-になること」を目標にする企業。社員全員が「テクノロジーを通して、安全・安心で住みやすく快適な生活環境をつくること」を胸に、日々の業務に取り組めていることが大きな魅力である。

橋脚や港湾構造物などを水中点検する際、点検に特化した潜水士が少なく、1日に潜れる時間に制限もある現状を考慮し、「今後は、水中ドローンも精力的に活用し、遠隔で点検技術者自らが確認する環境を整備する」と和多田氏は意気込みを語る。既に島根県とも協議を開始しており、説明会を開いた結果、肯定的なリアクションが多かったという。スクリーニング調査段階では、目視は必須でなく遠隔からモニターを通じてでも問題ないと定説になりつつある。和多田氏は、「AIでの画像診断やロボットの投入など、これから特化していきたい分野はまだ多い。テクノロジーによる省人化は、業界全体の高齢化・働き手不足の解決には避けては通れない道。当社の業務が、現状打破につながるよう、引き続き精進していきたい」と展望を述べた。旧態依然とした労働環境が色濃く残る現状だが、共立エンジニヤが目指すような世界観が実現できるのか―。このポイントが、今後の建設業界の先行きを決定付けることは間違いない。

新着記事

  • 2025.09.05

    社員教育の重視で新たな勝負に挑む 武壱工業

    足場・鳶工事などに携わる武壱工業(山口県下関市)は、社員教育に重きを置く方針を発表した。伊藤武士社長が、スローガンに掲げたのは「日本の未来に貢献する人材育成」。これまで短期間での社員育成を試みたことはあった。しかし、今回 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.09.04

    「地域の守り手」としての存在感を高める 伊東建設業協同組合

    今年5月に開催した伊東建設業協同組合の総会にて、堀口組(静岡県伊東市)の堀口正敏社長が理事長に就任した。50年以上の歴史を持つ同組合は、若い世代がリーダーシップを発揮する土壌が脈々と受け継がれている。就任直後の挨拶で堀口 […]
    クラフトバンク総研記者松本雄一
  • 2025.09.02

    企業永続を見据えた組織化に本腰 姶良電設

    入社間もない頃、現場作業に従事している時は、順調に業績が伸びていると思い込んでいた。しかし、姶良電設(鹿児島県姶良市)の東鶴真児社長は「いざ決算書を見ると、初めて債務超過に陥っている現実を知った」と当時を振り返る。経営面 […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.08.29

    新たなステージを見据えた活動に注力 ナガタ

    ナガタ(秋田市)の永田勲社長は、「現状維持は衰退の始まり。従業員を守るためにも売り上げを確保し、どのような状況下でもステップアップできる姿勢を貫く」という明確なスタンスを打ち出している。木造住宅の解体や再生可能エネルギー […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇