上場から1年半のランドネット。盤石な体制で人生100年時代を邁進
更新日:2025/4/28

投資用中古マンションの売買や賃貸管理を手掛けるランドネット(東京都豊島区)が、東京証券取引所スタンダード市場に上場してから、1年半が経過した。上場以降の変化を榮章博社長に聞くと、「優秀な人材が集まりやすくなり、金融機関との商談が以前よりスムーズに進められるようになった」と語る。創業時より上場は意識してきたが、最も苦境に陥った時期は、世間一般でいう「社員30人の壁」が目の前に立ちはだかった2009年。当時、在籍していた20人の営業マンのうち、10人が同時期に退職する事態が発生した時である。「どうして辞めていった?」と自問しても答えは見つからず、何らかの糸口を掴むため、京セラ創業者である稲盛和夫氏が塾長を務める「盛和塾」に入塾した。

盛和塾では「6つの精進」として、「誰にも負けない努力をする」、「謙虚にして驕らず」、「反省ある日々を送る」、「生きていることに感謝する」、「善行、利他行を積む」、「感性的な悩みをしない」を習得。特に6つ目の「感性的な悩みをしない」という部分に深い感銘を受け、「感情や感性のレベルで心労を重ねるべきではない。起きてしまったことは仕方ない。理性で物事を考え、新たな思いと行動を起こすべきだ」という気付きを得ることができたという。

この学びをヒントに、早速社内で様々な書籍を4~5人で読み合わせて感想を共有する輪読会を実施。それと同時に「働くことは楽しいこと。顧客を最優先に考えた上で、努力して稼ごう」という同じ価値観を持つ人を重視した採用を始めると、「3年後には、何故か社員が誰も辞めなくなっていた」と振り返る。なぜ社員が辞めなくなったのか、過去の組織運営との決定的な違いは何かと筆者が問うと、榮社長はしばらく間を置いた後、「それは続けるうちに私自身が変わることができたから」と率直に回答。輪読会は現在も毎朝開催しており、全社員が真摯かつ謙虚に自身の内面と向き合い、有益な情報を活かし合うことを組織として習慣に織り込んでいる。一朝一夕では成し得ない、ランドネットが持つ強さの根幹である。現在の社員数は約590人。榮社長は「現在地は通過点」と、現状に満足することなく、常に更なる先を見据えている。


不動産テック企業として、DXを駆使し独自の長所を発揮し続けるランドネットだが、榮社長は「業績向上により株価を上げ、エクイティファイナンス(新株発行による資金調達)のしやすい環境をどのように構築していくかなど、直近の課題もまだある」と話す。上場を経てこれまで以上に組織力を増強しているランドネットが、どのような過程を踏んでこの課題を克服していくかなど、今後の注目すべきポイントは多い。
「当面は、当社が取り扱える物件に戸建とアパートという種別を加えると同時に、クラウドファンディング部門の強化を進めていく方針だ。人生100年時代と言われる中、不動産投資を通していかに充実した人生を送れるか。近い将来は、世界中の不動産を自由に売買できる企業に成長することも視野に入れ、果敢な挑戦を続けていきたい」。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。