職人酒場の参加で、森左官が新たな可能性を拡張
更新日:2025/4/28
1人親方として左官業を展開する森左官(東京都練馬区)の森秀樹氏は、どんなに仕事がタイトな状況でも東京23区で開催する概ね全ての職人酒場に参加している。理由は、「今、忙しい毎日を送れているのは、職人酒場で繋がれた複数の方々と、継続的な仕事を積み重ねられているから。新たな可能性との接触という観点から考えると、今は職人酒場が無くなれば立ち行かなくなるくらい頼りにしている」と話す。

森氏は、建設業に従事していた父親の薦めで、長い間ゼネコン専属の工事に携わっていた。所属していた組織が、「当社からの仕事がなくなった場合は、自分で探してほしい。しかし、こちらが要請した際は戻ってくること」というシステムだった為、徐々に業務スタイルをシフト。請負仕事と並行して、個人事業主としての活動を始めた。開始直後から頭を悩ませたのが「人」の問題。知人の紹介を経た協力体制も敷いたが、現場に入るまでのスピードが遅く、サイトを通じて知り合ったケースでは、なかなか信頼関係の構築に至らない。解決策を模索している時に、何気なくネットで調べてみると、「ネットとリアルをハイブリッドで展開する職人酒場に辿り着くことができた」と振り返る。

「最初に参加した時は、会場に居る全員と名刺交換する意気込みで臨んでいたが、限られた時間内で実施するのは非効率的すぎると早々に悟った。数回目以降は、開始前に同じテーブルに居る方々と挨拶し、全体で行う自己紹介後に配布された参加者リストを確認し、自分から積極的にアプローチする方法に変えた。大勢で賑わう中、対象の方が見つけられない場合は、スタッフにお願いすれば、その場でマイクを使って呼び掛けて頂けるので、このサービスも重宝している」と自身のやり方を説明する。コロナ禍で非接触が主流になっていたが、「最後にその人となりを見極めるには、やはり対面での意思疎通が必要」というポリシーに、職人酒場のスタンスが見事に合致した形になった。

「当面は、東京で開催する全ての職人酒場に参加し、様々な業種の方と知り合い、その関係強化と実績向上を目指す方針に変わりはない。私が職人酒場に参加して以降、今なお付き合いのある企業数は20社近くに増えている。今後、私自身が個人事業主としての歩みを確立するか、会社を設立し組織を運営していくかなどの詳細は模索の段階だが、職人酒場と私の活動が連携していくことは間違いない。常日頃から『新しい需要・選択肢』を求める意欲ある建設業事業者には、職人酒場への参加も視野に事業を展開してほしい。現状打破に繋がるはずだ」と見立てを述べた。「ネットよりリアルで」を重視して結果を残しつつ、次なる一手も探す貪欲な森氏。東京23区で開催する職人酒場に参加すると、そこでは森氏との応対が実現するはずだ。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。