信和グループ入りのエス・アイ・ルネスが、ルネス工法の更なる普及促進に注力 10 クラフトバンク総研
更新日:2025/4/29
エス・アイ・ルネス(大阪市中央区)は、2022年3月に信和ホールディングス(同市同区)のグループ会社に入った。これに伴い、エス・アイ・ルネスが開発した「ルネス工法」のフランチャイズ加盟する建設各社に、信和グループの不動産開発ノウハウを伝え、更なる企業価値の向上や事業拡大を進めることが可能となった。ルネス工法は、床下全体に広がる約60センチの空間を収納スペースとして有効に活かし、室内の騒音・振動を大幅に軽減する独自技術。配管類を床下に通すため、メンテンナンス性・可変性に優れ、建物の長寿命化を実現する。
信和建設の丸尾順治社長は「長い期間、フランチャイズに入りルネス工法を重宝する立場だったので、エス・アイ・ルネスが当社のグループ会社に加入したことを嬉しく思う。ルネス工法は、当社が惚れ込んだ特別な工法。これから取り扱うマンションなどに採用し、入居者の快適な暮らしをサポートしていきたい」と見解を述べた。この10ヶ月間は、両者間で綿密な打ち合わせを繰り返し、本格的に始動する準備を整えていた。エス・アイ・ルネスの川口貴之社長も、「自社で土地の仕入れから、建設・販売の過程を踏める点が非常に魅力的と感じ、グループに入ることができ感謝している。これまでは主に賃貸マンション建築にルネス工法を導入していたが、今後は分譲マンションなどにも幅広く提供していく方針だ」と先を見据える。国土交通省が推奨する「スケルトン・インフィル住宅」も現状では定着には程遠く、既存マンションの約40%が給排水管などの修繕が必要というデータもある。ルネス工法の採用により、入居者は間取りの変更や要望に応じたリニューアルができるなど、体感できるメリットは想像以上に多い。
「来期からは、当社が蓄積してきた知見を信和グループ内に留めず、全国の地場ゼネコンやデベロッパーに惜しみなく供給していきたい」と川口社長は話す。理由の根幹には「天変地異などの非常時に、真っ先に現場に駆け付けて対応するのは、ハウスメーカーでなく地域に根差したゼネコン。国土の安全・安心を確保するため、また各社が差別化を図る選択肢になれるよう、ルネス工法の普及促進に力を入れていく」という強い思いがある。信和建設が、ルネス工法を導入する前の売上高は20億円程度だったが、現在はグループ売上高600億円にまで成長している。この成功体験をグループ全体で共有している点も強みの1つである。川口社長は「人口減少が加速する中、築年数が経過しても資産価値・事業価値の落ちない建物を創ることが建設業の使命。SDGsやCO2排出量削減などの観点を考慮すると、今後建て替えを繰り返すことは困難になるだろう」と見立てを語る。丸尾社長も「ルネス工法のコンセプトは、『100年以上長持ちする建物で、自由な間取りと設備の変更を可能にすること』。今後、環境への配慮や良質な物を長く活用するスタイルが浸透すれば、ルネス工法の出番も自ずと増えるはず。現実と向き合い、時代のニーズを常に見極めながら、積極的な事業展開を図っていく」と固い決意を述べた。
信和グループは、既にタイなど海外進出を始めており、タイでもルネス工法を活かしたコンドミニアム「Runesu Thonglor 5(ルネス トンロー 5)」を開発した。近々ではカンボジアで小学校を建設予定だという。両者の思い描く構想が、どのような形で結実していくか注目である。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。