一致団結での難題克服に挑戦 庄原建設業協会
更新日:2025/4/29
庄原建設業協会(広島県庄原市)では、少子高齢化・過疎化が進む改善策を練っている。現場では依然として即戦力の必要な状況が続くが、協会では長期的な視点に立ち、資格を持たない新卒社員を確保後、育成に力を入れるスタイルも検討する。会員企業の技術者が他業種に移る事態も発生する中、何とかその流れに抗う施策も始めている。

昨年9月に広島県は、低入札価格調査制度「変動型調査基準価格」を導入した。公共工事の調査基準価格が、従来の90%から下限を82%に引き下げられた同制度は、現在も下限値に近い入札が頻発する。中田和克会長(中田建設・代表取締役)は、「優良表彰の実績がある建設会社と、安価での受注だけを目論む企業が並べられ、『価格』だけで選定される現状には強い違和感がある」と警鐘を鳴らす。この一年間で実際に廃業を選ぶ業者も増加の一途を辿っており、後継者不足の問題も加えると、健全な業界環境の維持すら難しい実態に直面している。「現実として庄原市では、1社でも当協会に所属する建設会社が倒産すれば、県・市道の生活基盤の維持が困難に陥るほど、逼迫した状況が続いている。現状では会員たちは『地元への思い』を胸に利益度外視で活動しているが、限界を迎える時期もそう遠くはないと感じている」と本音を話す。実際に中田会長が社長を務める中田建設(広島県庄原市)では、赤字が続き過ぎた為に草刈りの事業は停止した。このような連鎖は取り返しの付かない事態を招く恐れがあり、今からでも早急な方針転換が求められている。


協会内において中田会長は、県内の中山間部に関する情報交換・共有を心掛けている。加盟する広島県建設業協会連合会などの会合でも、広島市付近のような都会とでは同じ県内でも需要・現況に隔たりが大きいこともあり、「庄原市としての主張を正確に伝えなければ、業界改善には繋がらない」との責任感にも駆られている。特に働き方改革の推進では、日給で働く現場作業者からは「もっと働きたいのに働けなくなり、給与が大幅に下がった」と不平不満が出ており、「儲からないので他業種に移る」と最悪の決断をする者も現れ始めた。この状勢を何とか食い止めようと、今なお広島県建設業協会連合会とも連携することで、広島県に提言を繰り返す日々を送っている。


中田会長は「県全体で大きな変革を実施できなければ、もう県内の建設業界が発展することはないだろう」と口惜しそうに話す。個人で実現できることには限界があり、志半ばで会社を畳む決断をした同志たちも多く見てきた。しかし、今も中田会長自身を支えているのは、「建設業は地域のインフラを守るべき確固たる存在だ」との明確なプライドだという。会員同士では、「一致団結して最後の力を振り絞り、この難局を乗り超えよう」と叱咤激励・切磋磋琢できる関係性を維持する。精神論には限りがあり、今から打てる施策は極めて少ないが、県・市内の安全・安心を会員の「気持ち」以外で守る選択肢はまだ残されてはいる。この問題の解決点は、行政機関と各協会・企業による綿密なコミュニケーションを経た先にしか存在しない。
全国中小建設業協会=https://www.zenchuken.or.jp/
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。