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置床工事の秀和建工。IT駆使の集客で安定経営

更新日:2025/5/2

置床工事の秀和建工。IT駆使の集客で安定経営

置床工事を手掛ける秀和建工(神奈川県大和市)の中山哲夫社長が、新聞社の広告営業などを経験後、同社に入社したのが1999年。他業種からの転身ということもあり、入社当初は周囲の職人に、露骨な無視や嫌がらせなど厳しい態度を取られることが多かった。この現状を打開するため、中山社長は皆が嫌がるクレーム処理や顧客への説明などの業務を率先して遂行。「社内で優位な立ち位置を獲得するには、周りがやりたがらない仕事を積極的に引き受け、結果を出すことが1番の近道」と自分に言い聞かせ、一心不乱に取り組んだ。また、職人としての技術も磨き、フローリングから聞こえる床鳴りの音だけで、その原因と結果が判別できる技術を習得できる頃には、職長として立場は逆転。職人との関係も改善されていたという。

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代表就任後は、実の兄である中山惣一専務と2人3脚で経営を手掛けている。1番大きな改革として、1社の下請け工事のみに依存していた状態を脱却し、直請工事を全体の9割程度に増やせたこと。また、「置床.com」という自社サイトを創設し、工法や床の材質、エリア、施工した建物の種類ごとに分類した膨大な施工事例を紹介した効果が大きく、「潜在的な需要を表面化させ、現在の安定的な売り上げに繋げることができた」と経緯を語る。ウェブ開発やSEO対策など、最初は慣れず試行錯誤の繰り返しだったが、地道な実績の積み重ねと情報の更新により突破口が開けた瞬間になった。施工後に発行する建設産業専門団体連合会(建専連)の保証書も好評で、常に利用者が安心して依頼できる環境を整備していることが、秀和建工の特徴である。 

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社内では、入社初期から個人事業主の寄せ集め状態だった職人の体制を、正社員化に画一し社会保険を付与するなど、社員が安定して活躍できる組織に変革。給与体系も公正に職能給でランク分けし、手当もきちんと付けるようになってからは、「社員が高いモチベーションを維持しながら働けるように変わった」と目に見える変化を話す。インドネシアとベトナムから迎え入れた8人の社員からも「日本人と変わらない給料を貰えることに驚いた。業績を上げた分、収入も増えるので、これまで以上の結果を出していきたい」との声も上がっている。

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「今後は、1部の外注している工事も内製化し、組織として高品質なサービスを安定的に提供できるシステムを確立していく」と展望を語る。「お客さまは、もちろん大事で必要不可欠な存在だ。しかし、経営者としての最優先事項は、社員が長く心地良く働ける土台を作り上げること。現段階では改善点も多いが、社員との対話を重視し、引き続き会社としての理想を追求していきたい」。

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