群馬から業界改革を実施。ソウワ・ディライトが残された可能性に賭ける
更新日:2025/5/2

「2代目の自分が皆と同じ仕事量では認められにくい。早急に実績を作らなければ」。
大学卒業後に東京にある商社での勤務を経て、渡邉仁基専務取締役は父親の創業したソウワ・ディライト(前橋市)に入社した。社内から「現場を知らない息子が入ってきた」と見定めらないよう、一心不乱で膨大な業務をこなし続けた。現場に電工職人として入職し、その後は設計、積算、総務と様々な部署を積極的に経験。建設業は資格社会という現実を早期に理解し、必要とされた全ての試験に挑戦し合格してきた。現在は、各部署の統括を担いながら、兄である社長の下支えをしている。

「70歳以上の職人が何度も現場に駆り出され続けるのは建設業界だけ」と、慢性的に巻き起り続ける人手不足を憂慮し、各協会を通じて同じ群馬県内の企業と積極的な意思疎通を実施。「時間はかかるが今が最後のチャンスと捉え、若手社員の採用・育成の積極化を手掛けることで、少しずつでも歯止めをかけたい」と強い意志を示す。

実際に渡邉専務自身も入社前までは、建設業=3K(きつい、汚い、危険)というイメージを持っていた。しかし、「実際はイメージが先行し過ぎていて事実と異なると知った。周囲との連携を含め工夫次第では、これ以上に充実感のある仕事はないと、建設業界に興味が薄れている若者にこそ知ってほしい」と熱く語る。「今やらなければ、いつやる?」。長い期間、建設業界の様々な分野で、このような文言が跋扈(ばっこ)しては放置されてきたが、若手の人材不足・登用に関しては、真の意味で最終段階に突入したという現実に直面している。

現在、ソウワ・ディライトでは電気設備の他、プロジェクトマッピングなど光を用いて、クリエイティブな発想の創造につなげるソーシャル事業に注力している。地元に住む子供たちと日常的に交流を深めることで、「建設業界は新たなチャレンジも可能で魅力的」という発信も行う。


「これからの時代は、競合他社を意識し過ぎるのではなく、業界全体を良き方向に導くため、複数の会社同士で協力を継続していくことが鍵になるはずだ。当社の組織運営に限定しても修正すべき点は多いが、会社全体で団結して課題解決に取り組んでいきたい」と見通しを話した。渡邉専務は「今すぐ会社の垣根を超えた対策に取り掛からなければ、すぐに取返しのつかない事態が発生する」と理解している。道のりは果てしなく長く険しいものだ。しかし、これ以外の改善策は見当たらない。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。