鈴貴工業がチーム形成力を重視した取り組みに挑む
更新日:2025/5/2

金属加工工事を幅広く手掛ける鈴貴工業(岐阜市)が、来年4月に会社設立20周年を迎える。これまでの道のりを鈴木岳彦社長に聞くと、「長く険しかったとも感じるが、猛スピードで駆け抜けてきた印象の方が強い」と振り返える。現在は、各種保険の完備や福利厚生の充実化に加え、資格取得・独立開業の支援を徹底するなど、「人」を最優先にする会社として定着している。

鈴木社長は、地場ゼネコンで現場監督を経験後、金属工事の会社に入り、その下請けとして独立。独立後は、現場監督の体験を活かし、「数年で人の採用や業務拡大を実現できた」と話す。業績は好調で客観的には、何ら問題ないように見えた。しかし、日が経つにつれ、「現場監督の段取りを通じて、初めて仕事が成り立つ1人親方は、『現状に胡坐をかいているのでは?』という、監督時代からの違和感が自分の中で膨れ上がっていった」と体感。それ以降、「責任を持って工事ができる組織を目指し、1人親方や協力会社を集める形でなく、自社で職人を抱えて工事を実施する方向性にシフトした」と当時の心境を語る。



現在、社員の平均年齢は29歳。「未熟ではあるが、全員が図面を見れば即座に概要を把握し、ゼネコンや現場監督と直接・対等なコミュニケーションが取れる組織として成立するよう、時間は掛かるが準備したい」と展望を話す。社員には、最低限のルールだけを設定し、「不明点は正直に言うように」という教育スタイルを採用。「自分の仕事は、人間的な要素も含め、お客さまが対価を払いたいと思う存在か?」という視点を常に持てるよう心掛ける。各々が能動的に独自の価値観を提供するよう工夫し、それに見合う報酬を得られる努力をする。「これを継続することで、対価という最も明快な結果・やりがいを得られる形を構築できれば、若者にも仕事の醍醐味が伝わるはず」と長期的な方針を述べる。鈴木社長が取り組みを開始した同指針は、既に良い流れを形成しており、多くの取引先からは「鈴貴さんの社員は、端的に本質を捉えることができるので、仕事がしやすい」という厚い信頼を獲得し始めているという。


鈴木社長は、「今後は、現場で働く若者たちの価値を上げるため、社内にはチームで仕事に取り組む必要性を定着させる」と目標を語る。個人単体だけで働くということは、使いやすい駒として扱われる危険性が高い。この現実を凌駕するためには、今からチームを形成できる人間を評価し、これを将来的に想定される事業承継のポイントにしたいという意向があるようだ。「先行きの不透明な時代に突入しているが、今後は間違いなく仲間作りの重要性を実感できる体制でなければ、利益を上げ続けられる会社にはならない。依頼を待つだけでなく、自分たちで仕事を作れるチームを構成するのが、工事屋としての自負。『現場が主役』というモットーを念頭に、俯瞰した視野と細部にこだわる姿勢を突き詰めて定着させていきたい」という強い信念を述べた。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。